第2話 目を開けたその先に【詩織side】



詩織side


ドサッ……

「痛ったぁ……え?あれ?どこ!?ここどこ?」

へたり座っている床は砂利に変わり、服は着物みたいなものに変わってる。なんか、神社で巫女さんがきてるようなやつ……



「何寝ぼけたこといってるんだい!?ここは日華国の後宮だよ!!お前は今日から女官として働くんだ。こんな所で油を売ってる暇はないよ!」

知らないおばさんが私の前に仁王立ちして睨みつけてくる。……誰この人。

周りには同い年くらいの娘が沢山いて、修学旅行かと思うくらい密集している。

みんなフリフリしてるスカート?みたいなのをはいていて、私の服とは大違い。どこかの名家のお嬢様なのかな?


「……凜音ちゃんは?煌鬼は??」

「誰だいそいつは!?グダグダ言ってないで早くお立ち!時間が無いんだよ」

せっかちねぇ……

仕方なく立ち上がって服に付いた砂を払う。

すると、後ろからクスクス笑う声がした

「やぁねぇ、あの娘。後宮にきてここはどこ?ですってよ?笑っちゃうわぁ。ねぇ?姉さん」

「そうねぇ、皇帝にお目付けでも貰えると思ってやってきたんじゃないのかしらぁ?」

「ほらほら、2人ともおよし。寵愛を受けれるのは私たちよ。だってこんなに美しいのだもの。」

……誰、あの人たち。顔は似てるから姉妹なのかな??こういう時は関わらないのが1番だよね。小学校で習ったならった。

そう思って、再び前を向いた時だった。私のカバンを持ち上げて、はい!と渡してくれた女の子がいた。

「どうぞ!……大丈夫??そりゃあ、急にこんな所に連れてこられたら驚くよね。あ、私は瑠璃だよ!よろしくね」

なんていい子なの……この子。あぁ、さっきの姉妹の1億倍いい子だわ……

「あ、ありがとう。私の名前は詩織だよ」

「何を言ってるんだいお前は!?さっき名前を頂いただろう?皇帝からつけてもらった名前を捨てるなんてどんな神経してるんだい!?お前のなまえは詩季だよ!!」

なにそれ?と驚く私に瑠璃はコソッと耳打ちしてくれた。

「後宮に召し使う時はね皇帝から名前をもらうんだよ。まぁひとつひとつ考えるなんてとんでもなく時間かかるから、どっかのお偉いさんが被りのないように適当につけてるんだけどね……ってことの話さっき聞かなかった?」

なるほど……名前が変わるのね。しかもその話初耳……

私の名前は詩季ね。わかったわかった……もう!この世界はどうなってるの!?


気を取り直して……

「ってことで、私の名前は詩季。よろしくね瑠璃。」

「詩季ね、おっけ〜。詩季はこの辺出身じゃないみたいだね。分からないこと沢山あるみたいだし……私で良かったらなんでも聞いてね!」

もうほんといい子……ありがたいわ。


瑠璃と話している間にどこかの建物の前にたどり着いた。あのおばさんが大きな声を出す

「いいかい!?お前たちは今日からここで食い寝するんだよ。わかったかい?」

そういうとおばさんは次々に部屋に娘たちを突っ込んでいく。

「お前たちはここだよ」

そう言って私の肩をグイッと引っ張ると部屋の戸を開けてドン!と突き飛ばした。

……荒い。

隣を見ると同じく飛ばされた瑠璃がいた。

ということは瑠璃と、私の2人部屋だ。

やったぁ!安心して過ごせるよ……

あの三姉妹と一緒だったらどうしようかと思った。

「瑠璃よろしくね〜」

「うん!!」


荷物を片付けて、今日は明日に備えて休み時間となった。分からないことが多すぎて疲れる……

「瑠璃、私ここのことよく分からないんだけど……教えてくれない??」

「いいよ!じゃあ、後宮内を回りながら説明してあげるね!」

そういうと、何故か瑠璃は部屋を出ていった。また私の知らないこと……?

5分ほど経つと瑠璃が紙を持って帰ってきた。習字の炭でなにか書かれているようだけど見えない。

「瑠璃……それはなに??」

「え!?ほんとに何もわからないんだね……w

これは外出届けって言って後宮内を歩き回っていいよっていう許可証だよ。これを持っていればある程度のところに行くことができるの。まぁ……行けないところの方が多いけどねw」

「……へ、へぇ。」

この世界はそんなふうになってるのね……


「行こう!詩季ちゃん、案内してあげるね」

瑠璃が私の手をとって走り出す。

……ちょちょ!あんた結構長めの裾の履いてるんだから走ったら転ぶ……おょ?お……っとっとっと……わぁっ!!



……案の定「私が」コケた。

「もー!詩季ちゃん、なにしてんの〜?w」

コケた私の隣で瑠璃はケタケタ笑ってる。

もー!!なんで同じ服着ててあなた転ばないの!?

慌てて立ち上がると、廊下の端から笑い声が聞こえてきた。

「お姉様?またあの田舎娘が転んでらっしゃるわよw」

「あらほんとw助けて差しあげたら?」

「嫌よ〜、田舎が移ってしまうわ!汚らわしいwww」


……まーたあの姉妹か。ほんとにちょっかい出すのがお上手だこと。赤、青、黄の服をそれぞれ着ている三姉妹。……信号機みたいw

そういえば、あの人たちも私たちとおなじ仕事をするはずなのになんで違う服を来てるんだろう……

「……詩季?大丈夫??」

「……イタタ……大丈夫だよ。ねぇ、あの姉妹私たちと同じ仕事じゃないの?指定された服を着なければならないんじゃなかったっけ……?」

……あぁそれねと、瑠璃は話し始めた。要約すると、そこらのボンボンはお金さえ払えば色々融通が効くらしい。ちなみにあそこの姉妹はそこらの役人の娘らしくて、両親が自分の娘は皇后になると確信してるらしく出費は気にしないらしい。

……世の中そーゆー人ほど上手くいかないのに。


他愛のない話をしていると、ある場所の前で瑠璃が止まった。

「瑠璃、ここは?」

「ここは、食堂みたいな所で私たち女官とかその他の警備とか、そーゆー人達が集まってご飯を食べるところなの。さっきしごとのしわけの時に緑の服を渡されていたひとがいたでしょう?あれが給仕係。ちなみに妃嬪とか皇帝、皇后様に対しての食事を作る人達は服の紐が赤だから見たら気づけるはずだよ。」

……たしかにさっき緑の服をもらっていた女の子がいたな。お友達になったらおやつとか分けてもらえるかなぁ〜??楽しみたのしみ


再び歩き出すと、いくつもの道に別れた場所に来た。この先は、漢字の米みたいな感じに道が分かれていて、その手前に大きな門がある。そしてそこには2人の門番がいた。やっぱり後宮ってなると警備も着くんだな……

瑠璃はさっきもらってきた紙を取り出すと門番にこれです。とみせていた。門番はうんうんと頷くと早めに帰ってくるのだぞと私たちに念をおした。そして、万が一、妃嬪や皇帝に会ったら礼をするのを忘れるな。と何度も何度も言う。

……そりゃ礼をするのは知ってるけど。やり方は分からないよ?土下座でもするのが正解かね?

とブツブツ一人で言ってると、瑠璃は私の背中をぽんっと押して

「大丈夫、そんなことめったにないんだから!」

と笑顔で言ってきた。

まぁそうだよね。私みたいな底辺女が皇帝に会えるわけないしね……大丈夫、大丈夫!

うんうんと頷くと、門番はぎぎぎぎぃと扉を開けてくれた。

「じゃあ、詩季ちゃん行こうか。中に入ったら一通り説明してあげるね。」

門を通ってずかずかと中を進んでいく瑠璃の背中を追う。後宮の中に入ったのは初めてだって言ってたけど、やっぱ後宮のことについて知っているってのは一般常識なんだなと思う。何も知らない私は……逆に驚かれる。



米に別れた道のちょうど真ん中で止まった瑠璃が私に説明をしてくれる。

「いい?まずこの道は朱雀道(すざくみち)って言って、まず、皇帝とかみんなが集まって協議するところが1つあるの。大きな広場みたいなところね。」

瑠璃が説明してくれたことをノートにメモしていく。今後仕事をしていく上でここに入ることも少なからずあるだろう。一人で来た時の為にメモしておかなければ……

「……それで?」

「で、正式には名前がついてるんだけど……とりあえずわかりやすいように説明するね。さっきの部屋のほかに、皇帝宮、皇后宮、貴妃宮、賢妃宮、徳妃宮、淑妃宮ってのがあるの。今の皇帝には皇后がいないから、皇后宮は空き部屋。残りの部屋は来賓が入ってたりするかな……」

……ふむふむ。なるほど。それぞれ部屋に名前があるらしいけど分かりにくいっていう理由で、それぞれ皇帝宮とか、皇后宮と読んでいるらしい。

えーと、他にチェックすることは……

「そういえば四夫人と、皇帝の名前知らないな……」

「……え?……ほんとに?」

瑠璃はぽけっとした顔でこっちを見てきた。

だって私この国の人間じゃないし……

ほんと何も知らないの!?と瑠璃は渋々説明してくれた。

「いーい?じゃーまず、貴妃からね。貴妃の名前は桃葉(ももは)妃、とっても優しい穏やかな人だよ。たしか22歳。基調としてるのは赤とか桃色で、桃の花。次に賢妃、鳳凰(ほうおう)妃。キリッとしてる感じの人で、基調としてるのは青系と、鳥。年齢は確か……25かな。」

桃葉妃、桃色、22歳。

鳳凰妃、青色、25歳。

……私よりちょっと上のお姉さんが貴妃とか賢妃とかやってるんだね。凄いなぁ……

っと、メモメモ……

「次は徳妃、檸奈(れな)妃。年齢は15。基調としてるのは黄色系。徳妃は来たばっかりだからモチーフみたいなのはまだないの。」

「え!?15!?若くない!?」

……何か事情があったんだろうね。こんな若いうちから籠の鳥だもんな……可哀想。

「そう?でも貴妃もそのくらいで後宮入りしてたよ?で、最後に淑妃、名前は藍琉(あいる)妃。基調としてるのは紫とお花。17歳」

えーと、檸奈妃、黄色、15歳。

藍琉妃、紫、17歳。


みんな揃って難しい漢字してんのね……

覚えるの大変だわ……

「最後は皇帝ね。皇帝の名前は実は明かされていないの。皇帝になると名前はなくなるのよ。それで、皇帝には兄がいたらしいんだけどある日突然居なくなったらしくて……現皇帝は継承権2位なんだけど、1位のお兄様がいないから皇帝継いだらしいよ。」

「……じゃあ、仮にお兄さんが見つかったとしたらどうなるの?」

「それは、交代でしょ。でもここ数年行方知らずだっていう話だからね……」

後宮ってだいたいこういうの付き物だよね……シンデレラとかでもある継母に虐められるとかそーゆーの。

「そうなんだ……」


一通り話を聞きおわって朱雀道から離れようとした時だった。先程までほとんどひとがいなかった道ち宦官やらなにら沢山のひとが出てきた。その中に、たった1人で大勢の人に指示を出す男の人がいて、思わず目を惹かれてしまう。……すごいなぁあの人。キビキビと指示してて。

じーっと見てるとその男の人がこちらへづかづかとあるいてきた。

「詩季ちゃん!今すぐあたしの真似して!礼して!」

瑠璃は慌てた様子で私に向かって呟いた。

両手をあわせて礼をとっている。

……なに!?あの人お偉いさんなの!?

慌てて手を合わせて礼をとる。

……が、スルー。ま、そうだよね。


「ねぇ瑠璃、なにかあったのかな?」

コソッと耳元で呟く。

「……わからない。ちょっと聞いてこよう。」

そう言って瑠璃は近くにいた女官に話かけた。

「ねぇ、何かあったの?」

女官はあたふたしながらも質問に答えてくれた。


……まさかその答えが私の運命を大きく動かすとは知らずに

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女の子に話しかけたら後宮の姫になりました。〜幼なじみの男の子と後宮の謎を解き明かすぜ〜 @yu-are-angel

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