「言の葉の庭」のエンディングが好き

(注)映画「言の葉の庭」に関するネタバレがあります。


 


 私は大江千里のモノマネが得意なのだが、意識して息を吸う場面が多い。しかも、一音目にである。大ヒット曲「かっこ悪いふられ方」は、「かハァこ悪いふられ方」という感じである。このすぐに息をのむときに、全てを受け止める強さがある。大江千里は少し情けない歌詞を歌っていても、なぜか前向きに聞こえる。

 「言の葉の庭」、エンディング曲は秦基博の「Rain」である。これはもともと、大江の曲だ。これが非常に物語に合っていると感じたのだが、それだけにとても切ない。この物語は美しい恋愛を描いているとも受け取れるだろうが、私は「最高に美しいエゴがテーマ」なのだと思った。そして、大江と違い怪しさも寂しさも含む秦の声だからこそ、エンディングにふさわしい曲となっている。

 私は「言の葉の庭」が大好きなのだが、それは単純な「美しい恋愛」を描いているわけではないからだ。主人公は先生に恋をする。先生は主人公を恋愛相手としては受け止めないが、去っていく主人公に追いすがる。彼女にとって「なくてはならない人」は、「恋愛の相手」ではないのだ。おそらく先生はこの後もモテ続けるし、主人公は別の恋もするだろう。それでも二人が過ごした日々は、「映画になる程に」素晴らしい。

 「言の葉」といえば、作中に出てくる和歌のように、端的に表現したものを思い浮かべる。主人公と先生の関係は、そういう「短いものの積み重ね」だった。しかし、エンディングに流れる「Rain」には、とても多くの言葉が詰まっている。それでいて、秦の声は早口には聞こえない。サビにかけて思いが高まっていき、一気に思いを吐き出す感じである。ほとんど息継ぎは感じない。秦の「Rain」には、まだ割り切れていないものの、二人の思い出を抱えて行こうという決意が感じられる。

  私は大江の「Rain」も好きである。ただ、映画の内容に会うのはやはり秦の「Rain」である。


参照

清水らくは「「言の葉の庭」の終わり方」https://kakuyomu.jp/works/16816452220440358393/episodes/16817139556988941573

新海誠「言の葉の庭」(2013)東宝

大江千里「Rain」(1988)EPIC

秦基博「Rain」(2013)Ariola Japan

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