第6話 都会で頑張っていた自分に酔うことを、やめる。
実家とはいろいろありつつも、両親が高齢ということもあり、夫と2人で実家に一度戻る決意をした。
今回の引越しで、歌うと決めて上京した時になけなしのバイト代から月々3千円のローンで買ったアコギを捨てた。たくさんアコギを迎えてきたけど、その中で1番高価で気に入ってたもの。でも、手入れをサボっていたせいで弾きにくくなってしまい、申し訳ないことをした。
私の中では1番高価な7万円のエレアコで、シンガーソングライターのYUIも使っているモデルだ。ケーブルを繋ぐと心地いい低音が響く、お気に入りだった。
多分、おそらく、きっと、もうライブハウスでソロで歌うことはない。歌うとしてもウェブ上で、もしかしたら生配信くらい。機材はあるものしか使わない。だから、ケーブルを挿していい低音を響かせてくれたあの子は、ただ大きいだけの箱なってしまった。
それにしても、3千円のローンで会社(テーマパーク)に電話が来た時は、さすがに恥ずかしかった……
入ったばかりで認知されてなかったので、「あ、それ私ですぅ〜、」みたいな空気。上司から「ローン組んだの?!」なんて言われ、「月3千円くらいです…」というと黙った。
キュウリョウアゲテケロ
がむしゃらに音楽をして、がむしゃらに自分を売り出し、がむしゃらにあちこちで歌っていたのが、なんか「私は都会で頑張ってる!」という錯覚を生み出し、辛かったけど幸せだった。
今も幸せだけど、種類は違う。当時の私を知る人は、「カミソリ持ってそうに危なっかしかった」と言う。
そういう、危なっかしい時代に作った曲は、どれも気に入っている。魂量が全然違うのだ。幸せやメンタル的な落ち着きは、私の好きな作品を生み出せなくなってしまった。
だからそれは今、夫が請け負っていて、私は物語を作ることに専念している。いい夫と出会えたけれど、夫を探すまでに2人の旦那を、ステタ。
ゴメン
生まれてきてごめんね。 柚子川 明 @yuzukawa_may
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