真実

寺に入った安倍涼音は本堂に招かれた


「ちょっと待っとれ」


寺の住職が本堂の奥に行くと古い木箱と巻物を持ってきた


「これは?」


「これは、平城京の時に起きたあの事件の遺物だよ」


涼音は思わず立ち上がった


「そんなのが残っているのか! 確か平城京の事件はどれも火災がおきて当時の者は何も残らなかったってきく」


住職は笑いながら言う


「カッ! カッ! 全部燃えたわけじゃないんじゃよ。 これは討伐に向かった陰陽師が持って帰ってきたものとその体験談を書いた巻物じゃ」


住職は、2つの中から木箱を渡した。 涼音はその木箱を開けてみた


「こ...これは?」


その中に入っていたのは鱗に覆われたミイラ化した腕だった


「その事件で現れた謎の妖怪の腕だ。 その腕の持ち主は自分の事をリザードマンって名乗ってたみたいだぞ」


「リザードマン...そんな妖怪いないはず」


住職は続けて巻物を広げた


「これは、その時に戦ってた者が謎の妖怪について出てきた名前を書いた巻物だ」


その中には様々な名前が書かれていたがどれも見たことのない名前ばかりだった


「リザードマン、ゴブリン、オーク、吸血鬼ヴァンパイア...」


安倍涼音にはどれも聞いたことがない名前だった


「珍しい名前ばかりじゃろ? わしもその名前の妖怪にはあったことがない」


「ではこの妖怪はどこから?」


住職は巻物を更に広げた


「これが当時の陰陽師たちの考察じゃ」


そこには当時の陰陽寮の官僚達が当時の平城京の状況や事件の調査でまとめたものが書かれていた


 ”この4年間の出来事はどれも12月に起こった出来事であった


元凶は当時の天皇の弟君が妖怪と協力して妖怪を招きいれたと思われたが、実は陰陽寮の強力な結界のため失敗していた。


しかし、それがこの最悪ともいえよう災(わざわい)を引き起こした。


天皇の弟君は今の術式では妖怪を招き入れられないことを知ると術式の改造をし無理やり次元を作り上げた。 なぜ陰陽師ではない弟君が術式をいじることができたか、理由は、天皇の弟君っていう立場で術式をいじる方法も容易に手にれることができたと考えられる


しかし術式改造は専門家以外が行うのは、あまりにも危険が伴うことから禁止されていることだ。


そして作り上げた術式はあまりにも不安定な術式であった。


しかし、強力な術式が何個も組み込まれていたので、その結果私たちの結界を通すほどの強力な次元を作り出すことができたが、その通じる先は私たちがいる世界とは違う世界に次元がつながってしまったと考えられる。


そして違う世界にいた妖怪がその次元を渡って、この世界にきたと思われている”


「これが平城京でおきた事件の真実」


「そうじゃ、そして天皇様の元に天女が現れて手鏡を渡した」


涼音は手鏡を住職に渡す


「ではこれが呪物だったと言われる理由は」


住職は手鏡を受け取る


「これは天女が持っていたもので呪物ではない聖遺物だ」


聖遺物、僧侶や神などが創り上げた物を聖遺物と言われている


「そして、この聖遺物の特徴は悪に満ちたものを吸収すると言われている。 この天女の手鏡は当時の事件の発端となった次元をいくつも吸い込んで結果呪物となったのじゃ。 だが今この手鏡には悪に満ちたものがない。 ということは、誰かがこの手鏡をのぞいたな?」


「はい。その手鏡を見た妖怪はぬらりひょんです」


「そのぬらりひょんはどうなった?」


「消えてしまいました」


住職はしばらく黙り込んだ


「ふむ、我々の遥か昔の先輩たちが書いた書物と涼音殿が言ってる証言を照らし合わせると。 そのぬらりひょんは、昔平城京で起こった出来事の逆でぬらりひょんがあっちの世界に行ってしまったのかもしれんな」


「そっちの世界に行く方法は?」


「ふむ...待っとれ」


住職はまた寺の奥に行くと、書物を取り出した


「これは?」


「これはわしが知り合いが持ってた当時の陰陽寮の陰陽師がこの事件を受けて数年後にあっちの世界に行けるか実験をした研究を記した書物をわしが借りて勝手に書き写したものじゃ」


「書物の書き写しは犯罪では...」


「まぁ気にせんでもよい」


そして住職は白紙の札を取り出した


「わしは暇でのぉ、ちょっと趣味でこの研究をもとに術式を考えたんじゃ」


そういうと術式を札に書き加えていく


「この術式は?」


「昔使われていた術式に今使われている術式を加えたものじゃ、平城京や平安京初期の時にあった術式は少なくてな凡庸性にかけていたんじゃよ、しかし平安から戦国時代までの間に陰陽師の術式もどんどん新しいのが加わり凡庸性が高まったんじゃ」


住職はそれをいうと札に術式を書き終えた


「そしてこれが、あっちの世界へといける術式じゃ」


「これでいけるのですか!?」


まさかのことに涼音は驚いた


「あぁしかし、1つ問題があってな」


「問題とは??」


「試しに付近で悪さしてた妖怪を捕まえて向こうに飛ばしたんだが、呼び戻そうとしても、術式が反応しないんじゃよ」


「やられたのでは??」


「いや、術式自体が反応しないんじゃ、仮にやられたとしても札は反応するように術式を書いたから反応するはずなんじゃが、もしかしたらあっちの世界から帰る方法は別かもあるかもしれん、あるいは帰れないかの2択じゃな」


「では、あっちいったら帰れなくなる可能性があると」


住職は頷いた


「しかし、私は一度逃した妖怪は絶対に捕まえるまで追いかけます」


「そういうと思ったわい」


住職はニヤリと笑った。そして、安倍涼音はあっちの世界へと行く決心をした

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百鬼夜行~妖怪と魔物を率いる者~ llaruma @llaruma

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