第五章 勇者の理由
勇者の銀 巫女の御柱
「――――わかったぞ。あいつのやってることが!」
「なんじゃと!? 奏汰には奴の不死身のカラクリがわかったのか!?」
「わかった! そんでもって、俺なら多分なんとか出来る!」
奏汰はそう言いながら聖剣を支えにして立つと、その全身に緑光の輝きを
「……あいつの相手は俺が引き受ける! けど、俺は多分あいつの力を押さえ込むので精一杯になると思うんだ。一撃であいつを叩き潰せるようなの、頼めるか?」
「一撃でじゃと? ――――わかった。多少時間がかかるが、大丈夫かの?」
「ああ! 頼む!」
奏汰と
「――――どうしたね? 小生はまだこうして傷一つ、息一つ乱していないのだが。まさか、もう怖じ気づいてしまったかな?」
「勇者ってのはな――――怯えないから勇者なんだよ! 凪、頼んだぞ!」
「がってんじゃ! 抜かるなよ、奏汰!」
その背に
「
「はいはい。塩漬けになった
飛び出した奏汰とは別に、その場へと残った凪は手に持った
そしてその場でゆっくりと二度
「
あやかし御殿前。すでに交戦を再開し、激しく打ち合う奏汰と塵異には目もくれず
(奏汰よ――――! 信じておるぞ!)
凪はその心を神への祈りで染め抜きつつも、閉じた
「うおおおおおお! 勇者腕ひしぎ十字固めええええええ!」
そして、奏汰と塵異の攻防はその
勇者の緑。あらゆる傷を一時的に回復し、全ての状態異常を解除するリリースの力を使って瞬間的な活力を取り戻した奏汰は、空中に飛び上がって塵異の腕にまとわりつくと、そのまま一気に塵異の腕をへし折りにかかる。
「何でもやるな君は! しかし――――!」
だがしかし、塵異は奏汰が腕をへし折ろうと体を反らせると同時にその方向へと自らも高速回転。逆に腕にしがみついた奏汰をぶんぶんと振り回すと、そのまま凄まじい勢いと遠心力を乗せて地面が
「がっ…っ! こん……のおおおおおおお!」
「なんとっ!?」
しかし奏汰はそれを意に介さない。意識が飛びそうになるほどの衝撃を受けながらも、奏汰は塵異の腕を放さず、そのまま凄まじい力で塵異の肉体も大地に引きずり込む。
そしてそのまま馬乗りの態勢になると、塵異の傷一つない顔面に一発45トンの威力を誇る勇者パンチを連続で叩き込む。
「マウント勇者パンチ! 勇者パンチ! 勇者パンチ! 勇者パンチ!」
「ごふぁ! ごぼお! がが! げべぇ!?」
並の人間であれば一発殴られただけで異世界転生してしまうような威力の拳を、一切の容赦なく連続して顔面に叩き込まれる塵異。
「――――なんとも
確かにがっちりとマウントを取り、完全に逃走不可能となっていたはずの塵異が瞬時にその場から消える。
そして先ほどと同様、再び傷一つない状態となって奏汰の後方に
「――――やっぱりだ。お前、時間を操ってるだろ?」
「ぬ!?」
奏汰が発したその言葉に、塵異の表情に初めて驚きの色が浮かぶ。
奏汰は背後に出現した傷一つない塵異に鋭い眼光を向けると、ゆっくりと聖剣を
「なんと……これはやられた。まさか、すでに小生の力に予想がついていたとは」
「俺は前いた世界でも時間を操る敵と戦ったことがある。多分、お前は自分がやられた瞬間に数秒前の自分に戻ってるんだ。だから傷だけじゃなくて、ボロボロになった服とか帽子まで元通りになる」
燃えさかる炎を背に、
その姿に、塵異は
「屈辱だな。似たような
「――――一つ、聞かせてくれ」
「……?」
初めて怒りの感情を
「お前たちはなんで人を襲うんだ? 俺とお前はこうして話せてる。俺みたいに馬鹿ってわけでもないみたいだ。お前らになにか目的があったとして、それを話し合ってどうこうするってのは、無理なのか?」
「フム……何を言うかと思えば……」
奏汰の発したその言葉に、塵異は呆れたように
「君やあの巫女のように優れた力を持つ者相手ならまだしも、なぜ強者に
「……そうか。わかった」
塵異のその返答に奏汰は僅かに目を細めると、聖剣の切っ先を目の前の鬼に向けた。七色に輝いていた聖剣が激しく明滅し、その光を白銀へと変える。
「実は俺も出来るんだ。時間を操るっての」
「なに?」
その全身から銀の光を放つ奏汰。奏汰の持つ聖剣を中心に周囲の景色がぐにゃりと歪み、奏汰と塵異を包み込む。
「見せてやる――――! これが、勇者の銀だ!」
瞬間。対峙する奏汰と塵異から
「
その光に呼応するようにして、凪の
それと同時にかっとその瞳を見開いた凪は眼前に突き刺した
「いざ! 神式、
凪の
夜の闇がその一点だけ
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