翡翠の鬼
炎に巻かれるあやかし通りの
降り注ぐ火の粉の渦の中で対峙する
「
「早まるでない奏汰よ! 先の一撃は間違いなく奴に食らわせたはずじゃろ!? それが無傷とは、なにか我らの知らぬカラクリがあるのじゃ!」
「フム。先ほどの迷いなき一撃といい、なかなかに凄まじい闘気。あの
油断なく聖剣を構える奏汰に、塵異は挑発するように両手を広げてそう言った。
「俺は
「助けて頂き感謝いたしますよ
あやかし御殿を
「ありがとう玉藻さん! よくわかんないけど、その
「全ての鬼の
「半ばって、真ん中くらいってことか? つまり、こいつらの上にもっと強いのがいるのかよっ!?」
すでに一度刃を交えた
「フム。どうやら我らについてよく調べ、学んでいるようだ」
奏汰達の会話を興味深く聞いていた塵異は笑みを浮かべて手を叩くと、何度か大きく
「君たちの話に一つ補足させて貰うがね。小生と先の二人に力の上下は存在しない。
「よいな奏汰よ! 決して一人で無理をするでないぞ。お主はもう一人ではない。私と二人、力を合わせて鬼を討つのじゃ!」
「ああ……わかってる!」
「ならばよしじゃ!」
その叫びと同時、奏汰と凪は二人同時に塵異を
塵異はそれに笑みを浮かべ、両腕から
「よろしい。お相手する」
「近距離勇者キイイイイック!」
「神式――――!
瞬間、左右から突撃した奏汰と凪、双方の一撃を両腕で受けきる塵異。
凄まじい爆風が辺りを揺らし、火の粉の渦を巻き起こした。
「フム。なかなかの重さ。では次は小生の力を――――」
「させるかよっ!」
「――――お見せする!」
奏汰と凪の一撃を受け止め、反撃へ転じようとする塵異。しかし奏汰は即座に空中で身を
しかし塵異はそれを許さず、空中の奏汰の
「がっ!」
「にょわーーーーっ!?」
「確かに人知を越えた力。だが、まだまだ荒い」
蹴り飛ばされ、側面の焼け落ちた家の
「はあああああ! 勇者サマーソルトキイイイック!」
「君は
奏汰の人間離れした動きから飛び出したその蹴りを、塵異は腕を交差させて受ける。しかし地面すれすれから飛び上がるように打ち出された奏汰の蹴りは、その勢いそのままに塵異を空中へと弾き飛ばした。そして――――!
「もう一度じゃ奏汰!」
「任せろっ!」
吹き飛ばされながらも立ち上がり、傍に崩れ落ちていた巨大な家の支柱を軽々と持ち上げた凪が奏汰に向かって叫んだ。
それと同時、凪の周囲に無数の
「神式――――
「今度こそ決める!」
掛け声と共に巨大な木材の支柱を塵異めがけて超高速で
無数の符によって
「な……んと!?」
青い閃光が
「――――ッッッッ! どうだ――――っ!?」
「やったぞ奏汰! 大当たりじゃ!」
勇者の青が途切れ、奏汰が突風と共にその場に膝をついて再出現する。
凪はすぐさま奏汰に駆け寄ると、奏汰の肩を支えて油断なく周囲を見回した。
「さすがじゃ奏汰!
木っ端微塵に吹き飛び、
「ぜぇ……! ぜぇ……! 俺だけじゃ、ぜんぜん……無理だった。凪の――――」
「――――二人とも! まだですっ!」
その時、二人の戦いを見守っていた玉藻の声が二人に届き、同時に玉藻が放った二本の尾の形をした巨大な妖気が二人を大きく手前に引き戻した。
そしてそれとほぼ同時、それまで凪と奏汰がいた場所に
「――――フム。さて、続けるとしよう」
「どうなっておる……!? いくらなんでも反則じゃろ!?」
もはやとてもではないが信じられないその光景に、さすがの凪と玉藻も目を見開いて後ずさる。
「こ、これは困りましたねぇ……? ところで姫様、もしやとは思いますが、これは
「影日向の力が落ちておるじゃと? うーん、そのようなことはないと思うのじゃが……せいぜいここ数日樽の中に塩漬けにしておるくらいでの?」
「いやいやいや!? 思いっきりそれのせいじゃないんですかっ!? なんですか塩漬けって!? 神様は漬け物じゃないんですよ!?」
「にゃはは! つい勢いあまっての!」
「駄目だこの巫女……。早くなんとかしないと……!」
仮にも
だがしかし、それまで二人のやり取りに参加せず、再生した塵異をじっと見つめていた奏汰が何かに気付いたように口を開いた。
「――――わかったぞ。あいつのやってることが!」
△――――――――――――――――△
△△△ ここまでお読み頂きありがとうございます。執筆の励みになりますので面白かったら評価・フォロー・応援していただけるとうれしいです!△△△
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます