潜む鬼
「ギィギィ!」
夜の闇に響く
それを見た
「ちぃ! 一体どうなっておる!? これだけの鬼が町中におるのに全く気づけんかった!」
「こいつら、前に見たことある……。その時は気配を消したりなんてしてなかった……!」
「どっそーい!
「ありがとう輪入道さん! 助かる!」
漆黒の闇の中、上空に昇った輪入道の明かりと炸裂した警戒花火の閃光が重なり、それが開戦の合図となる。
「まだどこぞに残りが隠れておるやもしれん。油断するでないぞ!」
「鬼は
「おっしゃああああああああ!」
瞬間、各々の正面の鬼めがけて弾けるように加速する凪、
三人の中で最も身体能力の高い奏汰は一歩目の踏み込みですれ違い様に二体の鬼を両断。肉片に変えて爆発四散させると、そのまま群れる鬼共の中心点に突撃する。
「垂直落下式勇者キイイイイイイック!」
「ギャバアアアアア!?」
それはまるで現代兵器の直撃。ミサイルでも爆発したかのような閃光と共に球状の火柱が直上に吹き上がり、直撃すらしていない周辺の鬼が巻き込まれて粉砕される。
「にょわーーーー!? 奏汰よ、ちょっとは加減せい!」
「そうだった! 気をつける!」
「にゃは! 良いぞ、素直な奴じゃな!」
奏汰の巻き起こした大爆発の衝撃にあおられつつも、凪はその小さな体を軽快に跳ねさせ、木張りの
そしてそれと同時、巫女装束の
「凍って死ね」
三人が大立ち回りを行う長い通りに、
全てを凍てつかせる
「ギィ……ギギ……」
「砕けろ」
その冷気の
「さすがじゃ凍よ! しかしの……私たちもかなり寒いのじゃが!?」
「私はこれくらいがちょうどいい……なんならもっと寒くていい……」
奏汰や凪が相手をしていた鬼もまとめて
「……
「にょ?」
ひとまず鬼の群れを退治し、ほっと
「おお、ここにおったか! いったいどうし――――っ!」
「くそっ……! 間に合わなかった……」
そこには、木製の両開きの門の前で血だまりの中に倒れる
非常に危険な役職だが、それだけに給金も多く支払われた。そのため、このように多くの犠牲者を出しながらも、
「奏汰よ……その
「……遅かった。俺の力で治しても……もう、起きない」
「……そうか」
奏汰に駆け寄った凪は、悲痛な思いにその表情を歪め、奏汰に抱きかかえられたまだ年若い
だが不思議なことに、
「ぬああああ……っ!
「……私も悔しい。悔しいけど……おかしい。あんなに近づかれるまで鬼に気付けないなんて……」
その場へと集まってきた輪入道と凍が、倒れた
凪もまた、犠牲となった青年の胸元に
「奏汰よ……すまんの。私も油断しておった。お主が気付いてくれなければ、どうなっていたか」
「いや……俺も殆ど同じだった。この人の血の臭いも、凄くぼんやりした感じで……」
「ぼんやりじゃと……? まさか……!?」
青年への
「やられた……! 鬼共がわざわざこのような場所を襲うはずなかったのじゃ!」
凪が目を向けた先――――。
そこには、遠くで燃えさかる炎に飲み込まれるあやかし通りがあった。
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