第三章 江戸のあやかし
勇者、あやかしと出会う
「うおおおお! 人が多すぎる!?」
「にゃははは! そんな
「来た時は夜でわからなかったけど、江戸ってこんなに人がいたんだな! この前まで俺がいた世界じゃ、こんなに人のいる街なんてなかった!」
「確かに江戸は人だらけじゃな。日本橋の方に行けばここよりもっと人がおるぞ。それこそ足の踏み場もないほどにの!」
「そ、そんな場所もあるのか!? 江戸時代って凄いんだな!?」
普段通りの巫女装束に身を包んだ
時は
相次ぐ農作物の不作に対応して行われた天宝の大改革により、
鬼という恐るべき
「この辺りはむしろ人が少ない方じゃ。場所が場所なのでの」
「さっき凪が話してくれた、あやかしってのが大勢住んでる場所だな。あやかしって妖怪のことだろ? やっぱり妖怪って怖いのか? っていうか、鬼と妖怪は違うのか?」
「……奏汰よ。お主に悪意がないのはわかるが、鬼とあやかしを一緒くたにするような言葉は
「……わかった、気をつける」
何の気もなしに出た奏汰の言葉を、静かに
奏汰も凪のその話になるほどと表情を正すと、しっかりと
「なーに、あやかしなどと言っても多少人間と見た目が違うだけで、皆気の良い奴らじゃよ。特に奏汰はすでにあやかし衆の間に知られとるのでな、お主が来たとなれば奴らも喜ぶんじゃないかの?」
「俺が? なんで?」
「ほむ、奏汰は気付かんかったかもじゃが、お主が初めてここに降って来たあの晩、あやかし衆の何人かがお主に命を助けられたそうじゃ。大層感謝しておったぞ」
江戸の
二人は今、大魔王との激闘で傷ついたままになっている奏汰の体を
鬼という共通の
人間と同じく鬼の
「――――ようこそあやかし通りへ。歓迎しますよ、お二人とも」
「にょにょ?
折れ曲がり、くねりにくねった道の先。突如として開けた視界の向こう側に、賑やかな繁華街が出現する。
まだ正午までは間があるというのに、周囲の家々からは酒と焼き魚、そして奏汰が嗅いだことのない独特の臭いが漂ってくる。
そしてその街の丁度入り口。
赤い
「いえいえ、
玉藻はそう言って
「その節は他の者共々大変お世話になりました。改めて御礼を言わせて頂きますよ、
「こちらこそ! 俺はまだここに来たばかりで何もわからないんだ。出来れば色々教えてくれると助かるっ!」
玉藻の持つ、並の人間であれば
「まあまあ……やはりとても元気の良い、かわいらしいお方ですね。それに強くて勇ましくて……。ええ、ええ。もちろん教えて差し上げますよ。手取り足取り尾っぽ取り。それはもう色々と、ね?」
「ん?」
玉藻は奏汰が自らの視線に一切の動揺すら見せなかったことに驚き、それと同時に感心したようにほうと熱い息を一つついた。
そしてうっとりとした様子で
「……玉藻よ、言っておくが奏汰になにかしたりするでないぞ? まだ
「ほほほほ。はてさて、なんのことやら?」
凪にはたかれた手をさすりさすり。玉藻は着物の
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