勇者は休めず
「くそっ! 逃げられた……っ!」
上空に開いた大穴に消えた
「放っておくのじゃ。雑魚鬼と違い、やつらの狙いはいつも
「
「んにゃ、あの二人とは初対面じゃ。位冠持ちとは何度かやりあっておるがの。しかし、それよりもじゃ――――」
凪は忌々しげに空を
「この――――大馬鹿者がっ!」
「いてっ!?」
突然素肌を叩かれた奏汰は思わず声を上げた。しかしその痛みも一瞬。
見れば、凪がその白い手をどけた奏汰の胸元には、なにやら難しい字が書かれた符が貼り付けられていた。
「あれ……?」
「それは私が傷や疲労の回復に使う特別な符じゃ。少しはマシになるじゃろ……」
「お主……一体いつからあのような戦い方を続けてきた? もうとっくになにもかも折れる寸前だと、自分で気付いておらんのか……?」
「折れる……? 俺が……?」
凪のその言葉に、首を
だがそんな奏汰の様子とは
「昨夜も今も、奏汰が私や皆を助けてくれたことについては本当に感謝しておる……じゃが私は、どういうわけかお主にこれ以上戦って欲しくない……! まだお主のことなど何も知らぬが、どうにもこうにも辛いのじゃ……っ!」
「凪……」
燃えさかる夜の江戸で出会ってから今まで、気丈で
奏汰は、今こうして自分の目の前でやり場のない想いを抱え、摘まむようにして奏汰の着物の
「勇者よ……貴様の戦い、千年ぶりだが確かにこの目で見させてもらった」
互いにこれ以上かけられる言葉を持ち合わせないまま立ちすくむ二人の間に、戦いの
「奴らのような位冠持ちはいつもこうなのだ。
「……気に食わんが、正直なところそれで助かっているとも言えるのが腹立たしいところじゃな。位冠持ちに一斉にかかってこられれば、とっくに江戸など綺麗さっぱりなくなっておったじゃろうからな」
「いや、俺がここに来たからには、もう鬼の好きには絶対にさせない! 凪には悪いけど……たとえ俺がどうなっても、そんなことを見過ごしたりは俺にはできないっ!」
「お主……! どうしてわかってくれんのじゃっ!?」
恐るべき鬼の脅威を前に、決意も新たに一人
「無理だな。勇者よ、今の貴様では
「……なんだって?」
かつて、大魔王として世界そのものの支配を
たとえ見た目がピンク色のキモい生物に変わろうとも、やはりその魂は大魔王時代のままなのだ。
「今の戦いを見て確信した。貴様は余と戦った時よりも遙かに弱くなっている。かつての貴様はもっと強く、もっと輝いていたはず。勇者奏汰よ……ここに来るまでの間、いったい貴様に何があったのだ……?」
自身に向けられる全てを
「――――いや、だってお前にズタズタにされてからまだ三日しか経ってないし。傷も
「――――そうか。色々とすまんな」
「のじゃーーーーっ!? やっぱりお主のせいじゃったかこのボンクラ
こうして、ピンク色の謎生物はしばらく巨大な
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