The "Mourning" Sun Rises.
紫鳥コウ
1
陽は斜めに光を落として、灯台の
* * *
これから筆者は、
そしていずれ読者は、これが、物語を模した物語であることを知るだろう。
なお、これから純文学的な描写が続くが、いずれそれは、前衛に変わることを、心に
それでは物語に戻ろう。
* * *
鹿島は、喫煙所で声を潜めながら死人の悪口を言っている見ず知らずの二人の男性を横目に、山の方へと歩いていった。振り返ると、一面に広がる畑の向こうに港町が見える。あれが死人の育った町なのだ。
友人の死を受け入れられず、涙を見せることが恥ずかしいから、こうして歩いているわけではない。どうにも整理できない気持ちを、どうにか落ちつけたくて、考えすぎないように考えながら、誰もいない道を、東の方へと歩いているのだ。
山の向こうへ陽が隠れようとするころには、鹿島は元いたところへ戻っていた。結局、乱雑に散らばった感情を整理することはできなかった。もう
灯夏は窓から漏れてくる光を背にして、雪国の五月の夜にありがちな、善人が抱え持つ冷徹さのようなものを潜ませた空気に肌をさらして、鹿島のことを待っていた。
「整理はできた?」――灯夏は、彼の目を見ながら
黄色い電灯の光は、灯夏の大きな目の奥にある魅力を引き立てていた。その魅力というのは、死という動作の終焉の
式場の内側にいる死人の見えないところで、こうした露悪をふたりが一致させ、そのままあの海辺のホテルへと戻っていくことは、死別という言葉を造語として使用しているようで、ある種それは、反近代的な病のようなものだった。
死への価値観は個人の感覚にゆだねられ、その死への向き合い方が、ひとつの暗黙裏の同意の圧力に従属させられることはない。
悲しもうがそうでなかろうが自由なのであり、あのふたりの男のように死人を
灯夏がホテルの名前を運転手に告げた。この運転手は「ご愁傷様でしたね」と、独り言のように言ってタクシーを国道に乗せた。どうやら彼は、この町の外れにある葬儀場に、故人の知り合いが各地方から集まることで、自らの仕事が増えることに対する、愉快な感情を抱いているようだった。
タクシーは、
海の
「うまくすればいいのさ」
鹿島はそう言って、灯夏の腰に右手を回した。
「頼りない右手」
灯夏がそれに応じて見せた
彼は彼女を、人を
この日が――人間が
鹿島は部屋に入るなり、灯夏をベッドに導いた。獣どうしの演劇が、無観衆の中で上演された。
――――――
【読者の皆様へ 追記】
誠に勝手ながら、最新話の更新は、延期させて頂きます。
今夏から家族の介護を中心に生活しており、本作に注力できる時間が限られていたことが理由です。加えて、今秋に実家へと引っ越すことが決まったのも理由のひとつです。
なお「09月15日」から、加筆修正したお話を少しずつ公開いたします。
大変申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願い致します。
2024年08月29日 紫鳥コウ
【読者の皆様へ】
本作を書くにあたり、内容を精査したい部分がありますので、一度、完全に非公開にさせていただきました。「08月31日の午前1時」より連載を再開いたします。
突然のことで、大変申し訳ございません。ラストに向けて物語を紡いでいく上で、どうしても必要な修正作業のため、ご理解頂けると幸いです。
必ず、本作は完成いたしますので、少々お待ち頂けると幸いです。
2024年07月14日 紫鳥コウ
The "Mourning" Sun Rises. 紫鳥コウ @Smilitary
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