苦渋の決断
あのトカゲとの一戦から翌日、俺は現在装備の点検をしていた。
安全地帯に逃げられた時に確認する余裕がなかった為、装備が壊れていてもいたとしても直すことは出来なかった。
この奈落迷宮では、準備を怠ると死ぬ、トカゲ戦でそう迷宮の恐ろしさを再認識させられた。
いや、それは覚悟もか。
あの時、身を引かずに攻撃に転じていれば勝てたかもしれない。
だが、それをしていたらそれこそ死んでいた可能性も否定出来ない。
「……っ、あぁッ! 考えたってキリがない!!」
そうだ、今は考えるな。
幼馴染のことも、親友のことも、家族のことも。
今はここを出ることだけを考えろ!!
復讐の第一歩はそれだ!
ここを出るにはあのクソトカゲを殺さないといけない。
それに、例えクソトカゲを倒したとしてもあいつはただの雑兵だ。
あんな奴倒せないで、俺を裏切った奴らに復讐出来るのか?出来るわけがない。
あの魔物は通過点だ。俺の踏み台だ。
そう割り切れ!恐怖するな!!
……アイツを殺す策は、ある。
正直、気が進まないが、やるしかない。
『………マスター』
「ん? どうしたイブ」
『さっきから何をしていらっしゃるので?』
「なにって……あ」
余りにも深く考え事をしていたためもう作業が終わり、自身の手が虚空に向かって作業していることに気が付かなかった。
側から見ると、装備を何の意味もなくただ手で撫でまし続けている変人、それか不審者に見えるだろう。
自分でも分かる程、顔を赤くなるのを感じた。
「そっ、装備の点検も終わったから早速迷宮に入るぞ!」
『……照れ隠しが下手ですね。マスター』
うっせぇわ!お前に言われたくねぇよ!!
破損した鎧を、持っている材料で補強し終えた俺は顔赤くしながら駆け足で迷宮へと向かった。
別に照れ隠しじゃない。
俺はイズの索敵で敵に警戒しながら、迷宮内を進んでいた。
一つ分かったことがある。
この階層には、俺の知っているダンジョンや迷宮に比べて敵の数が異様に少ない。
トカゲの他に数匹しかいないことが確認出来た。
そしてそいつらはこの階層を徘徊している為、警戒をしていれば回避可能なことも分かった。
それは、この階層だけなくこの迷宮全域がそうなのかはまだ分からないがこれがいい知らせとは限らない。
敵の数が異様に少ない分、モンスターの強さが尋常ではなかった。
そして同時に、お互いに敵対していた。
自身のテリトリーに他のモンスターが少しでも近づくと威嚇を開始していた。
もちもん威嚇された側も威嚇し、戦闘の火花が散ろうとする場面を俺は見ていたが威嚇状態が続き、最終的にどちらも攻撃はしなかった。
その為二匹の戦闘情報は得られなかったが、威嚇状態の隙に二匹のテリトリーに次の階層がないことは確認出来た。
改めてイズの能力って凄いよな……
そうイズに言ったら、「私はマスターのスキルですから凄いのは貴方様です」と予想外の返答がきた。
私は神の恩恵ですから〜とかだと思ったが、予想と違ってちょっと言われると照れ臭い返しが来たな……
……話を戻そう、そんなことよりもこの情報で結論が出た。
次の階層への道は、あのトカゲの向こう側にある。
「……好都合だ」
リベンジだ。
「殺してやるよ、クソトカゲ」
そして俺はトカゲ……
最初の宿敵を、殺すために。
『……今日は索敵が目的なので目標討伐の為の物資を拠点に置いて来ていますが、切り札なしでいくので? 覚えてます?』
「あ、いえ……なんか、すいませんでした…」
前途多難。
最愛の幼馴染みに裏切られた俺は奈落の底で幸せになりたい! 柚子咲 @thekai0319
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。最愛の幼馴染みに裏切られた俺は奈落の底で幸せになりたい!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます