初戦闘②
耳が痛いほどの咆哮をあげて赤いトカゲが目標を捕食するために向かってくる。
「来たッ!!」
『右に避けてください!!』
イズの指示に従い、赤いトカゲの一挙手一投足をよく観察しギリギリで右に避ける。
すると格下に見ていた捕食対象がギリギリの瞬間で攻撃を避けたことに驚いたのか赤いトカゲがバランスを崩して転倒する。
そしてそれを見逃すアレクではなかった。
我流の剣術で振り向き様に赤いトカゲを斬り付け、そのまま斬り付けた時の勢いで距離をとる。
だが赤いトカゲの方が一枚上手だった。
素早く体勢を立て直し、アレクの移動先を的確に捉えてその場所に炎のブレスを吐く。
「くっ!」
移動先を封じられ、反応が遅れたアレクに赤いトカゲの攻撃が迫る。
それをまたギリギリでかわし、赤いトカゲの激しい攻撃に応戦する。
それが数秒続いたころ、
……不味いッ!押し切られる!!
レベルの差がありすぎるのだ。いくら魔法で身体強化していて剣の技術があったとしても元のステータスが違いすぎると負ける。
それをアレクは生まれて初めて実感していた。
『マスター このままでは負けます。』
( そんなの知ってるよ!!)
『ですから今から私がまた指示を出します。従って下さい。』
( 了解!)
そうイズと話している間も赤いトカゲの攻撃がとんでくる。それをかろうじて受け流し、赤いトカゲの首筋に一撃入れる。
( よしっ!!)
そして喜びの隙を突かれ、イズの指示を聞く前に自身の左腕に攻撃が迫る。
「しまっ……ッ!!」
そして左腕が飛ばされた。
「がぁああっッッ!?」
『マスターッ!?』
左腕の根元から激痛が走る。
間髪入れずに次の攻撃が迫る。
「くそっ……ッ!!」
それをまた受け流し、その隙にマジックボックスからある物を取り出し床に投げた。
それが地面に当たると魔物に有害で、煙幕としても使えるガスが周囲に充満していく。
その隙に距離を取り、取れた腕を回収する。
そして物陰を隠れ治療を開始した。
イズから回復スキルを取得していることは戦闘の前に聞いていた。
腕の痛みに耐え、息を荒くさせながらイズに問う。
「……イズ 腕を繋げるのは上……級か?」
『……いえ、腕を繋げるのでしたら最上級の方が良いでしょう。』
「……わかった」
『それと今のマスターが最上級回復魔法を使えるのは一度だけです 回復魔法を使うのは迷宮を出てからにしてください。……幸い迷宮の入り口は近いですし。』
「……わかった」
強い敗北感と激痛に耐えながら、俺は迷宮を出て回復魔法を使い魔力の枯渇による眠気で死ぬように眠り、俺は初戦闘を終えたのだった。
「くそ……また俺は……」
音もない奈落の底で一人の男の悔恨の声が谷に響いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます