Episode:17 Meetings

 カタリーナとの邂逅、その翌日には宿にメッセンジャーが来た。


「今回の掃討作戦において、本来予定していた突撃部隊を減らし、その分を退路を退路を断つ部隊にまわすそうです。ついては、突撃部隊と共に参戦し、準遊撃部隊としてその力をふるっていただきたい、と。」

「了解した。突撃部隊との顔合わせなどはあるか?」

「3日後にこの町を出発し、移動に1日、配置に1日を経て突撃を行う予定ですので、この間に顔合わせ等していただければ、と。」

「なるほど。食事などは?」

「食事等はすべてこちらで用意させていただきます。全力で戦闘可能な準備だけしていただければ、それで構いません。」

「了解した、想像を超える働きをお約束する、と伝えてくれ。」

「わかりました。では、3日後に。」


「聞いての通りだ。2日間で、できる準備はすべて行え。ついてはこれより2日、各自別行動とする。」

「わかりました。」「わかった。」


 俺は肉体専門だし、消耗している装備品もない。俺の装備なんて燃えない服くらいだが。実質二日のオフだ。しかし、彼女らはそうはいかんだろう。刀やナイフは刃こぼれし、切れ味も落ちる。万全を期すならば最終的な手入れは必要だろう。今目立つのは得策ではないだろうから、カリストの運動も3日お預けだ。

 この二日は、ほぼ魔術研究に費やしてしまった。まあ、特にすべきこともなかったから別にいいが。荷物チェックをしつつ気持ちを作っていると、この前と同じメッセンジャーが来た。


「準備はお済ですか?」

「ああ。」

「では、ついて来てください。できるだけ警戒されないよう、町を出た後で合流することになっています。」

「わかった。ちなみにカタリーナは同行するのか?」

「カタリーナ様はご同行されますが、部隊には入らず、ベースキャンプにて待機される予定です。有事の際には判断を仰げる距離にいていただかねばいけませんので。」

「なるほど。では、案内よろしく。」


 案内された場所では、カタリーナをはじめとして、たくさんの人が集合していた。そのうえ時間と共にさらに増えていく。いったんカタリーナに挨拶をしに行こう。


「おはようございます。」

「おはようございます。このたびはご助力いただき、ありがとうございます。お仲間のみなさんともども、活躍に期待しておりますよ。」

「ああ。こっちの二人の装備はこのメイド服だが、見た目とは裏腹にかなりいい装備だ。そこいらの鎧よりもよっぽど強いはずだから、安心してくれ。」

「あら。ですが、ここに集まっているのは町でも猛者なものばかり。見た目で侮る者などおりませんから、お気になさらぬよう。」


 そういわれ、周りを見る。確かに猛者が多い。少なくともこちらを見て、こちらの実力をある程度認識できるほどの実力者がそろっている。俺は負ける気はしないが、全員で一斉に襲ってこられると、モナたちだけでは敗北は必至だろう。そう思わせるだけの力量の人がそれだけの人数揃っている。こうして考えると、俺に接触したカタリーナは英断だといえる。これだけの戦力で野盗ごときに負けるとは思えないが、俺たちはもちろん、野盗の実力によってはモナとローズだけでも戦力差がひっくり返るだろう。もちろん、俺たちの実力を把握し、報告できる部下がいてこそだが。


「あちらにおりますのが、突撃部隊長です。顔合わせというのであれば、まず彼に会うのがよろしいかと。」


 メッセンジャーの彼がそう言うので、部隊長にもあいさつに行く。


「こんにちは。あなたが突撃部隊隊長であっているか?」

「おう。そっちはカタリーナ様が雇ったと言っていた男だな?会う前は正直考えすぎだとは思ったのだが、こうして相まみえると、理由も分かるという物だ。あちらの彼女らも相当な実力者と見えるが、お前さんとそこの熊は別物だな。正直、俺らでは勝てんというのが、わかるくらいだ。まあ、味方というなら心強いがな。だから、裏切ってくれるなよ?」

「ああ。とりあえずあんたの名前と、準遊撃部隊の自由度を教えてくれ。」

「俺はタロスキー。準遊撃部隊とは、俺からの指示をほぼ無条件に無視できる部隊だ。唯一指示を聞く必要があるのは、俺たちでは対処が困難な状況に陥った場合だ。それでいいか?」

「ああ。構わない。一応俺たちもそっちとの調和を保ちながら動こうとは思っているから、お願いしてくれれば聞くとは思うぞ。」

「そりゃ助かる。じゃあ、よろしくな。」

「おう。」


「皆、聴けっ!」


 話し終えたところで、カタリーナが声を張り上げる。


「集合が完了した。よって、これより移動を開始する。野盗どもに気取られぬよう、人通りのない道を行くことになる。険しい移動になるだろうが、諸君らの実力をもってすれば険しい行軍に耐え、そのうえで野盗どもを殲滅できると確信する。では、諸君らの健闘を祈る。死ぬなよ!」

「「「「応ッ!!!」」」」


 こうして、人生初めての集団行動が、幕を開けた。



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