Episode:11 In the forest
「そういえば、スライムの粘液は水筒で大丈夫なのか?」
スライム戦から二週間。急に気になったので聞いてみた。水筒に穴が開いたら大変だ。
「スライムの粘液は魔力を失うと固体になるらしいです。翌日確認したので間違いないと思います。」
「へえ。ちなみに何に使うんだ?」
「特殊な毒薬になるらしいですね。対象の魔力の身に反応して液体化するらしいです。」
「おっかないな。じゃあ、結構高く売れるのか?」
「ええ。少し裏に通じているならばかなりの額で売れるでしょう。スライムが出たときはその毒も警戒されるのですが、ここ数年はそういったうわさは聞かないので…。そういった点からも高く売れるかな、と。」
「私は裏の伝手などないぞ。まあ、言わずもがなというやつだろうが。」
「それに関しては私たちが売られていた奴隷商に売りつければよいのでは?非合法で奴隷落ちした私を売るくらいですから、きっと多少は闇に通じているでしょう。」
「なるほど。じゃあそうするか。」
「……ご主人様。」
「なんだ?」
「…その、そろそろ…。」
「ん?」
「あ、愛していただけないかな…と。」
「ああ~。ずっとそういえばご無沙汰だったか。では、今晩はカリストに警戒を頼もう。しかし、そうか。今後は週に一度くらいのペースでかわいがってやろう。」
そういうと、二人とも頬を赤らめてしまう…。そんな顔をされると、惚れ直してしまうじゃないか。
また別のある日。今日は二人と魔術研究の成果を報告する日の予定だ。まずはローズから。
「私は、魔力を刀の形にはできるようになった。自分の魔力を放出し、そのうえで極端に圧縮するイメージだったな。切れ味はまだまだだが、成果としては満足している。刀身が見えないのも良い。ただ、魔力の刀では衝拳は使えないから、鞘と刀身のない柄を作ってもらうのがいいかもしれない。私からはこんなところだ。」
「一回魔力の刀で殴ってもらえるか?」
「承知した。」
力を抜いていたので、少しよろける。
「なるほど。確かに見えないのにそこにある。人は無意識に目からの情報を信じるからな。想像以上に優秀な技になりそうだ。」
「次は私ですね。私は……喝ッ!!」
モナが気合を込めて叫ぶと、俺とローズの体が吹っ飛んだ。
「大丈夫ですか?!まだ加減が上手くできず…。これでも抑えたほうなのです。」
「いや、不意だったからな。だが、こちらも優秀そうだ。」
「この技は目いっぱい魔力を込めて声を出したら出来ました。もう一つ、歌で催眠や意識操作をする技も考案中ですが、こちらはまだ未完成です。」
「そっちも完成すれば使えそうだ。じゃあ、最後は俺だな。」
よし。俺の研究成果の番だ。これにかんしては自信がある。二人の喜ぶ顔が楽しみだ。
「じゃあ、どっちか俺に攻撃してきてくれ。」
一瞬のアイコンタクトで、モナが攻撃することになった。モナがナイフで俺を刺そうとする。その瞬間、俺の足元からナニカが飛び出て、その攻撃を防いだ。
「これは…?」
「俺の研究成果は、魔力で魂を再現することだ。今は一瞬しか物に宿っていられないが、殻として機能する物質の条件がわかれば、疑似生命を作れるかもしれない。」
「……もうご主人様関係で驚くことはないと思っていましたが……。」
「そうだな。まるで神だ。」
「まあ魔力による再現では限界もあるだろうがな。」
「十分すごいです。」
「ああ。」
「ちなみにさっきの技は、足元で一瞬炎化して俺の体とは別の肉をわざわざ作ってそこに疑似魂を入れ、防ぐように命令するという複雑なプロセスをたどった。現時点では使い道はほぼないな。」
こうして研究発表会は終わった。ちなみにそのあとの訓練では、モナが音の衝撃を使ってきた。もう秘密にする必要がないので、使い道を模索するようだ。まあ、モナが俺たちを驚かせようという茶目っ気を発揮した結果秘密になっていたのであって、本来は秘密にする理由など、これっぽっちもなかったのだが。
ちなみに音の衝撃(モナは音撃と名付けたようだ)は現時点では広範囲無差別攻撃なので、二対一の時にはローズの邪魔をしかねなかったが、一対一では防げない攻撃が来た時、少し隙を作る時など、かなり万能で厄介だった。
コアの数は1000を超えた。牙や爪は多すぎるので、かなりの高値が付きそうなものだけ残してある。魔術の方向も見えたし、二人もかなり強くなった。俺も成長を感じられるくらいには強くなったので、ここいらで一旦帰るのも手かもしれない。しばらく森の探索に力を回し、大物を狩ったら帰るとするか。
その約二週間後。
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