Episode:10 One day
起床→狩り→戦闘→魔術研究→音楽鑑賞
このスタイルでの生活が進む。何度聞いてもモナの歌は素晴らしい。この生活の唯一の娯楽だ。
この生活にも慣れ、魔獣からはぎ取ったコアが500を超えたころ、モナたちが初めて国難級に遭遇した。
「ご主人様。」
森で狩りをする。獲物を置こうとベースキャンプに戻ると、モナたちが俺を待っていた。
「どうした?」
「国難級だと思われる魔獣を見つけましたので、戻ってきました。」
「なるほど。対象は?」
「
「そうか。なら、倒しに行くか。衝拳が通じた場合は三人で衝拳を使って倒す。通じなかったときは、二人は有効な攻撃手段がないだろうから、ベースキャンプに撤退するように。」
「了解しました。」
森を進む。そういえば、三人揃って森に入るのはこれが初めてだ。敢えて先導せず、後ろからついていく。気を張りすぎず、適度な緊張をもって周囲を警戒している。途中何度か魔獣を見つけたが、避けられる戦闘は避け、襲われた場合も二人が対処していた。「私たちにお任せください」と言っていたので、むしろ俺が手を出すと怒られそうだ。
そしてついに、
粘りのある汚い緑色の液体がある。想像よりも大きい。体積でいえば30立方メートルほどか?ただの液体に見えるが、時折触手のように体の一部を延ばす様が、生命であることを示す。体中に散らばるコアを一つずつ壊すのは、なるほど骨が折れそうだ。そのうえ体の全てが強酸。攻撃のたびに武器をやられてはたまらない。聞けば体の一部を飛ばして攻撃することもあるらしい。飛ばしたほうもコアを持ち、その場で自立行動するのだから、これが王都に向けて進めば、きっと被害は甚大だろう。
近づき、そのまま衝拳を放つ。体の中でコアが砕けるのが見える。時間をかければ倒せるか?あとは酸への対策だが、二人は武器から衝拳を放てる。そこいらの木の枝を使えばいいだろう。二人とも意見を共有し、いよいよ、死闘とは名ばかりの長期消耗戦が始まった。
交代で睡眠をとり、食事をとる。火だけは俺が出さないといけないが、基本的にはこの流れを維持する。カリストは相性最悪なので、しばらく自由行動だ。さて、何日で倒せるか。一週間以内に倒せればいいが…。
一週間後。やはり倒せていない。衝拳はコアのみ破壊するので、大きさが変わらない。その分、一発で破壊できるコアの数が減った。コアは均等に配置されるらしく、内側にコアを隠すようなことはされていない。
二週間後。少し小さくなったか?どうやらコア一つで動かせる体の体積は決まっているらしい。
三週間後。体は半分ほどになった。地面にたまった体の一部だったものをモナが水筒で回収していた。売れるのだろうか。
こうして、結局四週間と少しかけて、スライムを倒しきることに成功した。最後のコアは破壊せずに回収した。腕が少し溶けたが、まあ俺はその程度なら大丈夫。久しぶりに三人で寝よう。
次の日は、久しぶりに昼過ぎまで寝ていた。カリストはしっかり警戒してくれていたらしい。一つ豚の死体があった。
「どうだった?初めての国難級は。」
「国難といわれる所以がわかりました。衝拳の技術がなければ逃げるしかなかったでしょう。」
「そうだな…。城壁も時間をかければと化してしまえるだろうし…。錆びた剣を使えばコアが破壊できないだろうから、武器を使い捨てながら地道に倒すしかないのか。」
「そうだな。街への接近を許せば戦いの途中にも被害は増えるわけだから、いかに早く気づけるかが大事かもな。ただ、逆に言えば資金と時間さえあれば倒せるだろうから、国が本腰を入れて動けば対処は簡単な部類だろう。」
「今日は余った肉で済ませて、訓練に当てようか。二人ともだいぶ衝拳がスムーズに打てるようになったろう?」
「はい。もう、本気の戦いでも自由に使えると思います。」
「私もだ。魔力操作と性質変化も上達した。あとは干渉の仕方だな。」
二人同時に戦うと、もはや防戦一方だ。いい訓練になる。一人を相手にするときは女性陣の訓練、二人同時の時は俺の訓練。ちょうどいい力関係になった。ただ、彼女らは二人がかりで俺といい勝負なのが悔しいらしい。気持ちはわかるが、二人とも強さで行ったら特Aレベルだと思うので、焦らずに己を高めてもらいたい。魔術を使えるようになれば、二人で来られると負けるかもしれない。まあ、負けることはあっても殺されることはないだろう。
…ふと思ったが、どうすれば俺は殺せるのだろうか。感覚としては全身炎化を解除する瞬間に衝拳をあてれば体に戻れなくなりそう。俺が全身炎化を使わなければ死ぬレベルの攻撃を放ち、すぐ衝拳を打つ。俺が俺を殺すならこれだな。ほかにも全身の魔力の制御を奪われたりすれば炎化も衝拳も使えないので殺せそう。無理難題だとは思うが。
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