　むかしむかし、剣の天才とよばれた一人の若者がいました。その男の剣は、男の切りたいものだけを切りました。男が望めば鉄をも切り裂くその剣は、いいひとを切りつけても傷はつかず、ぎゃくにわるいひとはまっぷたつにされました。たくさんの功績をあげた男は、ついにお姫様と結婚を許されました。

　その男が恋におちたお姫様が病気になったとき、男は万病に効く花をみつけるために旅に出ることを決めました。しかし、そのあとすぐ、お姫様の病気を治す方法が見つかりました。お姫様は、男にそれを知らせるために、病気が治ったとたくさんの国に伝えました。

　そうとも知らない男は、国を出て、花を探し続けました。そして男が二つ目の国についたとき、お姫様が病気でもなんでもなかったと聞かされました。男は悲しみ、だまされていたことに絶望し、お姫様が無事だったことを喜びました。そうして傷ついた男は、そのまま森に入り、三日三晩戦い続けました。そうして手足の感覚がなくなってきたころ、自分が死ぬことに気づいた男は、死ぬ間際に一輪の花を見つけました。それは万病に効く花。お姫様に聞いていた通りの花でした。男は、お姫様の話は本当だったんだと気づき、お姫様を疑った自分を呪いながら死んでいきました。

　嘘でないことは必ずしも本当のこととは限りません。あなたが聞いたことが全て本当とは限らないのです。また、間違った話はときに人の命を奪う武器にもなるのです。