☆ おやすみ 

  

 安らかに眠る女性の手を、私は握ったままでいた。

 そして心の中で、彼女へと語りかける。


 ねぇ。

 あなたは次に目を開けた時のために、どんなお願いごとをしたのかな。

 その願いをあなたは言葉にしなかったけれど、多分、あなたのことだから。

 みんなのために、この世界のために、『ほんとうの幸せ』を願っているんじゃないかな。

 私にはわかる。

 言葉がなくても、離れていても、私たちは通じ合っているのだから。


 夕陽が照らす少女は、幸福で満ちているかのように、きらめいていた。

 私はこれまでの幸せを思い出しながら、耳元でささやいた。






「おやすみ、メメ」





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おやすみ、メメ ようひ @youhi0924

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