瀬戸内に面した町にある、そこそこの進学校に入学した及川祐、矢島あかり、若宮千夏。それぞれに屈託を抱え、進むべく道に迷う3人の姿を追っていく。
まず、同じ出来事を個々の視点から、それぞれの心情を掘り下げながら展開していく構成で、とてもよく練られていることに唸ります。中学でも、そして高校に入ってからも、特別な努力をせずとも「普通に」1位を取れてしまう祐。<大丈夫。生まれ変わったあたしは、キラキラで底抜けに楽しい女の子だから>と自分に言い聞かせ続けるあかり。心の安寧を得るために<薬を飲むように勉強を摂取する>千夏。何が不安で何が不満で何を恐れて何を妬んでいるのか。喘ぐように足掻き続ける3人の高校生の気持ちが、そこを過ぎてしまった大人心にもグサグサと刺さりまくり。しばしば、自分の心から血が流れ出るような痛みに襲われますが、恐ろしく共感力も高い。
この感覚を、瞬間を言語化するセンス。ちょっと凄いです。絶対、書き続けて欲しい!
(「あなたに“刺さる”かもしれない物語!」4選/文=藤田香織)