人魚の秘密

信乃

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深海で彷徨う人魚が一人


─いつから私はココにいるの?

思い出せない。


長く美しい髪と尾を波に遊ばせる。

闇雲に泳ぎ疲れ果てた人魚は、やがて眠りにおちた。


微睡みの中。

彼女は地に足をつけていた。


(どうして?)

少女は、ただただ哀しみに沈んでいた。


(「─アイシテル」という言葉は嘘だったの?)


少女は涙でボロボロになった顔を覆う。

これ以上、なにも見たくないというように・・・・・・。


--信じたくない!!


(待って!行かないで!)


暗闇の中、自分に背を向ける愛しい人に声なき声で叫ぶ。


溢れる涙を波がさらってゆく。


(あぁそうか・・・・・・)


─-思い出した。


「私は人間だったのね」


自分の元を去った恋人。

現実を受け止めきれず私は、海に身を投げた。


あれから

ずっと彷徨っている。


(ばかね。今もあの人を愛してるなんて)


人魚は一雫ひとしずく、涙を流す。

行くべき場所も還る場所もない。

喪うものなどなにもない。


空っぽの心を抱えて人魚は再び海を彷徨うべく、波にたなびく美しいヒレを優雅に踊らせた。


••✼••┈┈┈┈••✼


村で一番美しいと評判の娘が海に身を沈めて暫くたった頃

入り江で時折、娘がすすり泣く声が聞こえると噂がたったそうだ。

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人魚の秘密 信乃 @kaku03

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