第9話

「みんな、本当によくやってくれた!」


 聞き慣れぬその声の方に視線を移すと、とんでもない人物がそこにはいた。


「こ、国王陛下!!!」


 私も何度かしかお会いしたことはない。まさか、いらしていたとは…


「ジュラ、やはり君に頼んだのは正解だったよ」


「はっ。恐れ入ります」


 ジュラが陛下の前に跪く。…ちょっとまって、ジュラに頼んでたって一体…?


「…我が子ながら、本当に情けない…民たちの血税を、私利私欲のために使用した挙句、その責任を貴族に押し付けるなど、あってはならぬ言語道断…!」


 陛下は言葉を噛み締めながら、苦しそうに話す。


「…ゆえに、当時私の元で働いてくれていたジュラに、全てを公にするよう調査を頼んだのだ…」


「そ、そうだったんだ…」


 つまりジュラは、陛下の勅命で動いていたんだ…なんてすごい…


「まあただ、ジュラがこの仕事を引き受けてくれた理由は、別にあったようだが」


「ちょ!!!!!」


 途端、ジュラの顔が真っ赤になる。…そういえば、前にも同じことがあったような…私はあの時の答えの続きを、ジュラに迫る。


「ねえジュラ、あの時わたしになんて言おうとしたの?」


「そ、それは、、」


 赤くなるジュラを、横からニヤニヤと眺める陛下。私には状況がさっぱりだけれど、ジュラは意を決したのか、ゆっくりと口を開く。


「ぼ、僕は…ただ…」


「…ただ?」


「ただ…エイプリルが…好き…なんだ」


「…は?」


 その言葉を聞き、私の体の中に沸々と感情が湧き上がり、爆発する。


「なにいってるのよ!!!あなたに振られたから私は王宮に行くことを選んだのに!!!!」


「ち、ちがう!!!それは君がはやとちりしてそれで!!!」


「ガーーハッハッハッハ!!」


 陛下の高笑いの前に、私たちの口論は強制終了する。


「つまり、お主らは元より相思相愛じゃったわけじゃなぁ??」


 陛下のからかいの言葉に、2人して赤くなる。


「ならば、誰も文句など言うまい!王子とその妹の不正を暴き、この国の未来を明るいものとしてくれるであろうお主らにこそ、ワシは跡を継いでもらいたい!」


「そ、そんな急に!!」


「ぼ、僕たち如きが!!」


「ガハハ!!!!誰にも文句など言わせん!!皆のもの!良いな!!!」


 会場にいた全員が、おおおおおおおおおおおおと野太い声をあげる。


「頼むぜ!2人とも!!」


「王子相手にあんなに堂々と…こりゃ面白い奴がいたもんだ!」


「子どもはいつできるんだ!!生まれた日は祝日にしてくれよ!!」


 …皆が皆、勝手なことを言ってくれる。私はまだ赤みが抜けぬ顔を、ジュラの方に向ける。彼もまた、私と同じ表情を浮かべていた。私たちは自然に手を取り、皆の前に立つ。私たちの未来を、皆に示すために。私たち自身が、幸せを掴むために。

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あなたの妹には、とんでもない秘密があるようですが?(笑) 大舟 @Daisen0926

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