美味しい地球

美味しい地球

　地面に大量の血痕が落ちていた。

　このような現象は、世界各地で起きている。サバンナで数キロにも渡る真っ赤な塊が一本砂漠を横断していた。

　日本でもそのような現象があり、この間は学校が真っ赤に染まっていたとニュースになっていた。

　建築物に対する嫌がらせということで、その血の成分が調べられた。

　それは何とケチャップだと言うではないか。

　様々な憶測が流れた。自作自演説――世界各地で起こっている理由が分からない。ケチャップ会社のプロモーション説――学校や国は警察に被害届を出している。そして、議論はオカルティックな推測を生んでいく。

　怪雨、これは着色されたり異物混じりの雨のことで、昔から内陸の土地に魚が落ちたり、大量のおたまじゃくしが落下したりとケチャップ事件もその怪雨の仕業ではないかというものだ。

　宇宙人の仕業ではないかという説もある。UFOが何かを連れ去るためのアブダクションの跡だとか地球人に何かを伝えるためのメッセージだとか、バカバカしいものが多かった。

　ただケチャップ事件の顛末は折しも、日本が初めに目にすることになる。

　雲間を割るように現れた巨大なナイフとフォークが日本列島を分断した。東日本が抉られるようにして、フォークで突き刺され、遥か上空に消えた。

　何てことはない。ケチャップは、地球を味付けしていただけに過ぎなかったのだ。