午後3時のカフェテラス

「お前も罪作りなソフトを作っちまったもんだな」

リモート画面から苦笑が漏れる。

溶けた氷がカランとグラスを鳴らす。抹茶入り緑茶はぬるくなりつつある。

「ああ、どう転んでも『あいつが悪い』という結論を出すんだからな」

黒づくめの男は相好を崩した。

「で、商品名はどうするよ。やっぱ、あれか」

リモートの相手に男は頷いた。

「俺のPNを冠する。アフターコロナ時代にふさわしい人事考課ソフトだからな」

「まったくお前らしいぜ。誰もが身近な悪者を欲する時代を切り拓くに相応しい」

数か月後、人事支援AI。MA-OHが正式リリースされた。名だたる天才ゲームデザイナー「まおう」氏のシミュレーションゲーム「仮想人類法廷」のエンジンを流用したソフトウェアだ。その発表会でサプライズが起きた。

MCがくだんのまおう氏に人体実験を勧めたのである。

「まず、言い出しっぺの法則発動ですよね?」

「えっ…えっ?」

「ご自身の進退をMA-OHに判定してもらいませんか?」

彼はとうぜん、慌てふためき、MA-OHに慈悲を乞うた。

結果は…。

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大魔王のなさけ 水原麻以 @maimizuhara

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