解説「叫びをください」

 短編小説を読んでいただいて初めて意味を理解できるような短歌連作に挑戦しました。


 自分の短歌の解説を自分でするのは大変気恥ずかしいのですが、もし短歌を通して、短編「叫び」の見え方が変わったり、深まったりしたらいいなと思っています。


 短歌は読んでくださる方の受け取り方が大切だと思っています。

 解説はしたものの「この説明は違うと思う」等のご意見は大歓迎です。



①複眼を磨いて捕食、過不足もなくエゴもない従弟はカマキリ


 カマキリを代表して自然界の生物は、自分が生き延びるためだけの究極の姿をしていたり行動を取っているように感じます。思うままに生きることに憧れながらも、そうできないのが人間かもしれません……。




②家族まるで二人羽織だ 動けないおれは火傷か食中毒で


 二人羽織は、二人一組になって一人は袖に手を通さずに座り、羽織を着た人の後ろから、もう一人が羽織の中に入って袖に手を通し、前の人に物を食べさせたりする宴会の芸です。

 つまり「動けない」のは熱々おでんを食べる方ですし、火傷したり食中毒になるのも「おれ」なわけです。




③手綱明け渡した人は後始末できなくなって「駄目ったら駄目」


「手綱」は人生の主導権的な意味合いで使っています。

 譲歩せず激怒する人は総じて、口癖のように「○○で決められているから駄目」と言って、「危険だから」等の正当な理由の説明が曖昧だったりするなあと偶に思います。




④ヘルペスの土壌はあんたの靴の泥 おれが不潔なだけがオチだな


 ヘルペスの、特に再発は疲労による免疫力の低下が主な原因となるので、ヘルペス≒ストレス反応です。

 ストレスの「土壌(そもそもの下地)」は「あんた」が土足で上がってきて泥をつけたことだけど、そこは誰にも顧みられなくて……といったニュアンスです。




⑤アンテナはまねば枯れる井戸のよう追い立てられて小説つくる


 ここで言う「アンテナ」は「小説をつくる」ためのアンテナなので「感受性」の比喩です。

(気をつけて色々な情報を集めること=アンテナを張る、と言ったりしますね。)

 また、実際に必ずしも「水を汲まないから井戸が枯れる」ということではないのでこれも例え話です。

 後半について、追い立てられる気分なのか、追いかけてくる対象があるのか、などの解釈は読者様にお任せします。




⑥遺棄された乾燥わかめの山踏んで育つウオノメごとおれなんだな


「遺棄」は主に人間の死体や生きた動物について使うので、ここでは生命に類するものを捨てる意味に取っていただけたらなと思っています。

「乾燥わかめ」はパリパリ割れて、足の裏にウオノメがあったら踏むと痛そうですよね。(短編の中では「乾燥わかめ」≒感情・愛情、の意味でした……)

 そのウオノメを削って治療することなく「育て」るわけです。




⑦騙し絵に騙されに行く論理ロジックはいらないかわり叫びをください


 短編を読んでいただけたら察しがつくかもしれません。

「騙し絵」≒未来の世界、現実・実体のあるもの≒現在の世界を暗示しています。

 ここでは「叫び」を安らぎをもたらすものとして捉えています。



 解説は以上です。気になる箇所があったらご指摘くださると有難いです!





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短歌七首連作「叫びをください」 @kazura1441

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