第103話 ピロートークで(薔薇。菓子職人×塾講師)


※このあたり(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816700426235889522)の二人。この話単体でも読めます


「だいすきですよ」

「トーリーさんって、いつも真っ直ぐに言うよね……」

「ええ、つたわらないとかなしいですから」

「あと、毎日言うし」

「……いつ言えなくなるか、わからないでしょう?」

 トーリーさんが、僕の手を握って微笑む。

 少しだけ、遠い目をして。

「人間、いつ死ぬかわかりません」

「ま、僕は仕事的にいつ過労死するかって感じだもんね」

「颯太さん」

「……ごめん。不謹慎だった」

 手を伸ばして、トーリーさんの頭を抱きかかえた。

「置いていかないよ。置いていかないように、その、気を付けるから」

「おねがいしますね」

 トーリーさんの長い腕が、僕を閉じ込める。

「さみしくて、私が死んでしまいます」

「後追いされたら、後味悪いなあ……がんばるよ」

 トーリーさんが安心したように笑うから、僕はちょっと切なくなって、彼の額にキスをひとつ落とした。


 END.

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