第27話 離婚証明書
ところがそれからある日、拓哉が久しぶりに家に帰って来たので何気なく拓哉の車の中を見ていてその封筒を見つけた時はギョッとした。
封筒の表に『離婚証明書』と書いてあった。
不審に思って中を見てみると『離婚証明書』と書かれた続きに驚くべき事が記してあった。
拓哉と私は協議離婚し私の籍は実家に戻ったように記してある。
親権は私になっていたが子供達の戸籍は宙ぶらりんの状態だった。
これにはさすがの私も頭の中が真っ白になった。
そもそも『離婚証明書』などというものが存在するのか?聞いた事も見た事もなかった。
直ぐに拓哉に問い詰めると「由美に離婚を迫られ離婚したと言うと証拠を見せろと責められたので偽装した」と言う。
本当だろうか?拓哉はヤバいと思ったのかいつの間にか何処かへ行ってしまった。
納得のいかない私は直ぐに町役場に行って事情を話した。
すると職員は「戸籍抄本を取ってもらったら分かります」と言うので早速戸籍抄本を請求してみると間違いなく離婚したようになっていた。
私は「離婚届を書いた覚えがないので見せて欲しい」と言ってみたが職員は「見せる事は出来ません」と言う。
「本人でも見せてもらえないのか?」と聞くと「規則で見せられない事になっています。所定の場所に署名捺印がきちんとされていたらこちらは受理します」と。
その時受付けた職員の話によると拓哉が届を出しに来て『離婚証明書』を作成して欲しいと言ったらしい。
納得がいかず私は書いた覚えがないと再度言うと「たまに夫婦喧嘩をされてカッとなった勢いで離婚届を勝手に出される方もいらっしゃいます。もう一度婚姻届を出されたら元に戻りますよ」と事も無げに職員は言う。
冗談じゃないと私は思った。
もうこれ以上職員と話しても無駄なので私はとりあえず家に帰った。
後に拓哉にこの事を追及すると「由美に証拠を見せた後で直ぐ婚姻届を出すつもりだった。志乃と別れるつもりはない」と言った。
この場に及んでまだそんな事を言うのかと怒るというより呆れてしまった。
この時すでに私の気持ちは決まっていた。
どんな理由があろうとこれが拓哉の答えなのだ。
離婚届は提出済だ。
このまま子供達と家を出よう。
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