第16話 再就職

 元々楽ではなかった生活が多額な借金返済で益々苦しくなってきた。今回の事で反省して気持ちを新たに頑張ってくれるならと義父も私も一生懸命協力していた。


 拓哉は経験があるという事で地元のスーパー『東光』に再就職が決まった。元々仕事は出来る方だったので直ぐに認められ仕事を任せてもらえるようになった。新たな店舗の開店を機に店長に任命されていた。このまま順風満帆に行くと思っていた。


 ところがここから更なる試練が待っていた。これでもかこれでもかと留まる事はなかった。新しい職場で直ぐに気の合う飲み友達が出来て仕事が終了した後は真っ直ぐに家に帰る事はなく毎晩飲み歩くようになったのだ。義父は元々厳しい人で孫に対しても箸の持ち方から始め行儀作法にはうるさい人だった。食事中はピリピリしたものだ。私なんかは洗濯物の干し方まで指摘された事があり煙たい存在だった。そんな訳で当然拓哉にも厳しく接していた為義父とは揉める事も多く、あんな事件を起こした事もあり家に帰り辛かったのかもしれない。


 義父は厳しい反面、子供達を動物園や温泉などによく遊びに連れて行ってくれていた。拓哉が家庭を顧みないので父親代わりをしていてくれたのだろう。あの頃は辛い事があまりにも多く義父に対して不満はあっても感謝の気持ちが持てなかったが今思うと義父がいてくれたお陰で父親がいるにも関わらず母子家庭の様な子供達が淋しい思いをせずに済んだのかもしれない。又、義父がいてくれたお陰で規則正しい生活も出来ていたのだろう。

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