第15話 更なる裏切り
ところが拓哉のしていた事はこれだけでは終わらなかった。耳を疑いたくなる様な事が次から次へと発覚したのだ。横領していたお金でアパートを借り、事もあろうに拓哉の店でアルバイトをしていた大学生の女の子と一緒に暮らしていたのだ。又、帳簿をごまかした時は直ぐにお金を戻すつもりだったがお金が用意出来なかった時はサラ金にも手を出していたのだ。そうしてサラ金にも返済が滞るようになると帳簿のごまかしがバレないことをいい事に次々横領の額が増え続けていったのだ。いったいどれだけのお金を横領していたのか発覚するまで全金額を拓哉自身も把握していなかった。
一括で返済できない為月々8万円を10年かけて返済する事で承諾してもらった。それからは拓哉の留守中にサラ金からも電話が掛かってくるようになった。結婚前はタバコも辞めていてお酒も飲めなかった。それがいつの間にかタバコを吸い始めていてお酒もかなり飲めるようになっていた。いったいいつから拓哉はこんなに変わってしまったのだろう。気付かない私も相当バカだとショックを超えて笑えてきた。
一緒に暮らしていた大学生の女の子にも事件が発覚してから一度だけ会った。名前は絵里といって髪の長い可愛い子だった。拓哉の浮気は私もショックだったが私と子供の出現に彼女はもっとショックを受けていた。というのも彼女と会って分かった事だが彼女は拓哉が独身だと思っていて(拓哉が最初から独身だと言っていたらしい)いつか結婚が出来ると思っていたのだ。その時私は生後8ヶ月の桃と一緒だったのだが桃の存在が更に絵里を苦しめた。何故なら一度拓哉の子供を妊娠したのだが拓哉に「絵里が大学を無事卒業するまで子供は諦めよう」と言って堕胎を勧められたのだ。彼女も大学だけはきちんと卒業したいという気持ちがあり子供を諦めたのだ。産んでいたら丁度桃と同じくらいだったかもしれない。彼女ははっきり言わなかったがそんな気がした。私は話をしてみて本当に拓哉の言葉を信じて純真に好きだったんだと思えたので彼女の事を責める事は出来なかった。私も騙されていたが彼女も騙された私と同じ被害者だ。拓哉は何て言ったらいいんだろう。魔性の男だ。甘いマスクの上口調が優しくもう信じないと思っていた私も何度も騙されているのだから。私もつくづくバカな女だ。そんな拓哉を許しているのだから。
私は結婚式で誓いの言葉を交わした時から何があっても絶対離婚はしないと決めていた。しかも3人の子供がいるので後には引けなかった。私の都合で父親のいない子にはしたくなかった。
カクヨム仲間の加須千花様から頂きました。
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