第17話 交通事故
多額の借金が出来てから拓哉の乗っているセドリックのローンも大きかったので車を手放そうという話が持ち上がっていた。拓哉一人が乗っていて私達家族を乗せてもらう事は殆んどなかった。下取り価格を調べてもらうと残りのローンを返済するくらいの値段になった。通勤には会社の車を利用させてもらう事も出来た。これなら車のローンが無くなって経済的に楽になると拓哉に相談すると拓哉も渋々だが承諾してくれた。早速、車屋に手配して車を取りに来てもらいローンも返済できる段取りをした。
ところが事も有ろうに拓哉はいつの間にかその車を取り返しに行って帰る途中に単独ではあったが事故を起こしてしまったのだ。車は廃車となり怪我をした拓哉は入院、車は処分してローンだけが残ってしまった。おまけに壊してしまったガードレールの修理の依頼、突っ込んだ先の道路や畑の片付けから畑の持ち主への謝罪。本人が入院中の為、全て私がしなければならなかった。幸い拓哉の怪我は大したことがなく直ぐ退院出来たが情けなくて仕方が無かった。拓哉は何を考えているんだろう。この時も知らせを聞いた時は何かの間違いだろうと思った。売ったはずのセドリックを取り返して乗っていようとは。その車で帰る途中に事故をするとは。こんな事が現実にあるのかと。しかも自分の身に降りかかろうとは。いったいどこまで私を苦しめたら気が済むのだろう。もはや私の知っている拓哉ではなかった。そうとしか思えなかった。妻や子供の事は考えに及ばないのだろうか?その上免許停止にもなってしまった。その為私は朝、夜と通勤の送迎をする事になった。拓哉の行為が許せずモヤモヤとした気持ちだったが仕事だけはちゃんとしてもらわないと困るからだ。
その頃拓哉は友人からショートパブ『ライム』の共同経営の話を持ち掛けられており返済の足しになればと始めたばかりだった。その頃ブームになっていたフィリピンパブだった。私に一応相談はあったが大体は事後承諾だった。上手くいくとは思えなくて私は気乗りしなかったがいつの間にか話は進んでいた。大まかな仕事は殆んど友人の星野さんが行っていたが拓哉もスーパーの仕事の後いつも『ライム』に顔を出していた。星野さんに送ってもらう事もあったが時々連絡があれば私が迎えに行っていた。そうして何とか免許停止期間を無事過ごす事が出来た。
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