第12話 同居
翔が1歳になった頃から拓哉の実家のお義父さんから度々電話がかかり「田舎に帰って来い」と言われるようになった。元々拓哉は長男という事で家を継ぐ事にはなっていたが結納を交わした頃は拓哉のご両親は健在で拓哉が田舎に帰るのは定年を迎えてからという話だった。「それまではお互い別々の方が気を遣わずに済むから」とお義母さんは笑っていた。
ところが結婚半年前に拓哉のお義母さんは突然倒れて亡くなったのだ。知らせを聞いた時はびっくりした。お義母さんが亡くなった事により一瞬、なんだか前途に暗い影が差したような嫌な予感がした。何の根拠もないけど結婚をこのまま進めてもいいのかな?そんな思いがふと頭をよぎった。実際私はその不安を拓哉に話して「結婚を止めたい」と漏らしたことがあった。もちろん拓哉は承知しなかった。私にしてもお義母さんが亡くなった事が結婚を止める理由にはならない事は分かっていた。結婚の日取りも決まっていた。その流れに任せ予定通り結婚したのだった。
お義母さんが亡くなった事で一人暮らしになったお義父さんから度々田舎に帰って来いと言われるようになったのだ。定年まで拓哉の親と同居する事はないと思っていたので私は気乗りがしなかった。拓哉も私と同じ思いでいたようだが「いずれ帰るんだったら早い方が良い」と言うお義父さんの意見も無に出来なかった。
こうして私達は約2年間のアパート生活にピリオドを打ち拓哉の実家がある田舎に帰って行ったのだった。拓哉も隣町にある支店に転勤させてもらった。実家に帰ってからは私も亡くなったお義母さんの代わりに講中勤め(ご近所付き合い)が始まり忙しくなった。その頃の拓哉の実家では近所に不幸があると講中(近所)が集まり不幸があった家の食事やお葬式の手伝いをするのが当たり前だった。もちろん私の実家もそうだった。又、畑や田んぼもあったので農繁期は一家総出で手伝っていた。今のように機械化されておらず殆どが手作業だった。
拓哉は隣町のスーパーに変わってからは仕事の帰りも割と早くなっていた。次第に同居生活にもご近所付き合いにも慣れていき暫くは穏やかな日々が続いていた。お義父さんとの同居で戸惑う事もあったが同居してから拓哉の仕事の帰りが早くなってきていたので同居して良かった点もあるなと思っていた。
同居して間もなく2人目を妊娠した。この時もつわりが酷く家事や翔の世話をするのもしんどくてつわりが治まるまで暫く翔を連れて実家に帰らせてもらっていた。やがてつわりが落ち着いてきたので家に戻ったがその頃は拓哉の仕事の帰りが遅くなることが多く翔はいつもお義父さんがお風呂に入れてくれていた。
その頃の私はお弁当もお義父さんの分も作り食事時も拓哉のいない事が多くお義父さんと過ごす事の方が多かったので私はお義父さんと結婚した訳ではないのにと不満に思っていた。
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