第7話 拓哉の仕事

 その頃スーパーの主任をしていた拓哉は休みの日もお店が気になるからと仕事に出かける事が殆どだった。年中無休のスーパーの上お店の色々な事を任されている主任の立場なので仕方ないのかもと思ったが、本当に仕事をしてるのかな?と疑ったこともある。


 そんな時、拓哉が「それならお店に来て手伝ってよ」と言うので一度だけ閉店後誰もいないお店にこっそり行って私も手伝った事がある。売り出し商品を目立つように陳列するなど商品を売る為の色々なテクニックがある様で拓哉は私にそんな事を得意そうに説明しながら次々と売り場を作っていった。なるほど、何気なく買い物をしていたが私達はお店の戦略に上手く乗せられていたのだなんて感心しながら私も拓哉の指示に従って商品を運ぶのを手伝ったりした。こうした作業はかなり時間を要し、拓哉は閉店後いつも一人でこんな作業をしていると言うのだ。誰かにやれと言われたわけではないが自分なりのこだわりがありとことんやらないと気が済まないらしい。納得が行くまでやっていると時間も忘れて気づいたらかなり遅くなってしまうらしい。


 陳列した商品の棚を見て自画自賛している満足そうな拓哉を見ていると帰りの遅い拓哉を一人で待ってる私の身にもなってよと思っていた不満も薄らいでくるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る