第4話 初めての経験 (1)

 拓哉と付き合い始めて4か月が経った頃、地元の夏祭りに一緒に行く事になった。今まで異性とこんなにとことん付き合ったことが無かったので何もかもが初めての経験だった。私の飲みかけのジュースを拓哉がサッと取って飲んでしまっただけでもドキドキした。手を繋ぎながら歩くだけでもワクワクした。


 夏祭りの帰り拓哉は家まで送ってくれた。歩いて帰る途中人気のない道が続いた時、拓哉が急に立ち止まって私の方を向いたと思ったら唇をふさがれていた。一瞬何が起きたか分からなかったがすぐに私、拓哉とキスしてるんだと気づいた。心臓がバクバクしていた。一瞬だったと思うけどすごく長く感じた。生まれて初めてのキスだった。自分が自分でなくなるような気がした。薄暗かったから耐えられたけどなんだかすごく恥ずかしくてまともに顔が見れなく言葉も出なかった。


 暫く無言で歩いたような気がする。どんな風にして家にたどり着いたか記憶が飛んでしまった。家に帰ってからも初キスの事が頭から離れなかった。拓哉と付き合う様になって私は私の意外な一面を発見した。今まですべてが自分中心で回っていたがなんと寝ても覚めても拓哉の事で頭がいっぱいになっていた。意外と私って尽くすタイプだったんだとか、結構やきもち焼きなんだとか、自分では素直な良い子だと思っていたけど我が儘なところもいっぱいあるなとか、拓哉のお陰で勉強頑張れるようになったなとか、こんなに泣き虫だったかなとか、人を好きになると自分の良い面も悪い面もどんどん出てきて楽しくなったり悲しくなったり、喜怒哀楽を一生分出し切った気がした。拓哉とキスをしてからもっともっと二人の距離が接近した気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る