第3話 出逢い (2)
そんなある日、事態が急展開する事が起こった。
昼休憩、教室にいると中学の同級生だった中川倫也が突然やって来て
「なぁ木村、山下拓哉って知ってるか?」と聞いてきた。
私は意中の人の名前を急に言われてびっくりしながらも平静を装って
「知ってるけど」と答えた。
すると中川倫也は「山下が木村の事好きらしいから付き合ってやってくれよ」と言ってきた。
「えぇっー!」 私は突然の事に驚いていると
「まっ、そういう事だから宜しく。後で本人が来るから」そう言い残して中川倫也は去って行った。
どういう事?後で本人が来るって?拓哉が私の事好きって本当?沢山の?マークが私の頭の中でグルグル回っている。
もう午後からの授業は全く耳に入ってこなかった。
嬉しいような困るような複雑な気持ちだった。
本人が私の前に現れたら私は何て答えたらいいんだろう。
そんな風に思いながら拓哉が訪ねて来るのをドキドキしながら待っていた。
ところが一向に拓哉は現れなかった。
一週間位経っただろうか?偶然学校の帰り際に校門近くで拓哉と会った。
拓哉は私に気づくと
「中川が何か言ったと思うけど気にせんで」と言ってきた。
私は「じゃあ、あれは嘘だったの?」と聞くと
「嘘じゃないけど中川が勝手に言ったことだから」と申し訳なさそうに言った。
私は咄嗟に「嬉しかったのに」と言っていた。
拓哉は私の言葉に意外そうな顔をしてから「本気にしてもらってもいいよ。木村さんが嫌じゃなかったら」と笑顔で言ってきた。
私は「うん」と小さく頷いた。
「じゃあ今度、本気で誘うよ」と言うと拓哉は何処かに消えていった。
私は暫くボーっとして立ちすくんでいた。
たった今二人が交わした会話を頭の中で何度も繰り返していた。
えっ?うそっ!私、拓哉と付き合う事になったの?意外な展開に私が一番驚いていた。
高校卒業まで心に秘めておこうと思っていた私の恋は急展開で実を結んだのだった。
それからは拓哉が授業が終わると私のクラスに迎えに来るようになっていつも一緒に帰るようになった。
私は自転車で通学していたが拓哉は隣町からバスで通っていた。
バス停までの間を私は自転車を押しながら二人でブラブラ寄り道しながらおしゃべりするのが日課になっていた。
バス停の近くの土手に座り込んで何時間も話し込む事も度々あった。
学校でも公認のカップルとなった。
最初付き合うと決めた時一抹の不安はあった。一目惚れした時私の中で彼をどんどん理想化してしまっていたので付き合ってみたら私の思っている人と違うなんて事があるんじゃないかと。
逆に彼の方も私を理想化していてガッカリなんて事もあるかもしれないなんて。
でも実際に付き合ってみて私はどんどん拓哉に惹かれていった。
話が面白くて優しかった。
当時拓哉は野球が大好きでよく友達とキャッチボールをしていた。
それをカッコいいなと私はいつも眺めていた。
部活で野球部はあったが野球部は原則、坊主頭にしなければいけなかったのでそれが嫌で入部していなかった。
そこで拓哉は野球好きの仲間を集めて学校の先生に交渉して『軟式野球同好会』を立ち上げようとしていた。
話は成立し部活と並んで正式に学校の運動クラブとして認めてもらえた。
拓哉はピッチャーで私はマネージャーをする事になった。
放課後は地道に練習を重ね休日は各地で試合に臨んでいた。
こうして私達は日々充実した高校生活を送っていた。
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