裏・おばさん構文進化形態大全
おばさんは激怒した。
おばさんは新参の解釈がわからぬ。
「誰も俺の推しに近づくなァーーーーーーーッッッッ!!!!!」
おばさんは永遠に真実に辿り着けないギャングのボスの如き咆哮を上げた。
「よくも……よくも俺の推しをッ………解釈ド無視キャラ崩壊させやがってッ…………!!!!」
そしておばさんは決意した。
「奴を………駆逐(嫌がらせ)してやる…………ッ!!!!!」
おばさんこと大葉燦(おおばあきら)はどこにでもいる普通の厄介オタクであった。
彼女は名前が「太陽燦々(さんさん)」の「燦」と同じ漢字であるため、中学の頃に「お・おばさん」と呼ばれいじめられていた。
本当は深く傷ついていたが無理しておばさんキャラを演じてみたところ、クラスの首領(ドン)として君臨する女子に「おもしれー女」と気に入られ、他の者にいじめられることは無くなり、代わりに彼女はその女子の機嫌を伺うようになり、おべっかを使うようになった。
今いる首領のグループから追い出されたらまたいじめられるかも……。
そんな意識が彼女を陰湿なお察し文化への道を歩ませ、一定のグループのトップが気にいるものは自分がどう感じていようと全て良し、気に入らないものは徹底的に排除すべしという暗黙の了解が彼女の心の奥底に若くして根付いてしまったのだった。
しかもおばさんが若き頃はまだ世間的にオタクへの理解が無く、特に男性キャラ同士の恋愛的エロ妄想は禁忌とされていた。
中学の頃は首領がそういうものを底辺の証とみなしていたため、一緒になって「キモ、死ね」と言っていたが、おばさんは本当はそういうものが好きだったので、バレないようにするのに必死だった。
高校になり、またどこかのグループ……出来るだけ上位のものに寄生しなければ死ぬと思っていたおばさんは、オシャレではないが気の強い女が率いる群れに何とか受け入れられることに成功、しかし「お前オタクなんだろ」と瞬時にバレてしまう事件が発生。
おばさんは「オタク=ヘドロ同然の醜い存在」と思っていたため、「何故バレた?死ぬ」と終末を感じていたが、なんとそのグループのトップが「実は俺もオタクなんだよな」と言い出した。しかも「俺は腐女子なんだ。知ってる?男同士の……(以下下品な話)」と話し出したのでおばさんも身の内を明かした。
無事オタク兼同志率いるグループの仲間になることができたおばさんであったが、ここでもおべっかを使い、本当の友になれていたわけではなかった。
というのも、おばさんとトップのキャラ解釈は微妙にズレており、だがトップに「それ違くね?」と言うことも出来ない心の弱いおばさんは表面的にトップの解釈が正しいということにし、反論する者が現れては「何言ってんの?キモ」と仲間同士で徹底排除するようになったのだった。
こうなってはますますおばさん含む下っ端は自分の意見を言うことが出来ず、常に誰かにおもね、気を遣い、機嫌を伺い空気を察して生きるようになった。
哀れなことにおばさんは真の友達を知らないので、これが友情というものであり当たり前のことと思い、高校が終われば短大、短大が終われば仕事場やサークルで……と繰り返しつまらないグループの一端として生きてきたのだった。
こうしておばさんの人生に40〜50年近い年月が流れた。
おばさんは未だ独り身であった。
と言っても別に独り身であることに納得して生きているようなタイプではなく、おばさんの所属しているグループの空気が「恋人を作ったら裏切りと見なす」という風潮が出来上がっていたため、おばさん含む他のおばさんも恐怖と虚栄心で「恋人いりませんwウチら永遠の絆で結ばれてっし」という顔で生きてきたのであった。
おばさんはこのグループにしか依存先が無く、グループの意向に従うことでしか自我を保てない、いやむしろ自我など無く、誰かの………それもはっきりとしない全体的な集合意識的なものを正義とし、完全に排他的選民思想の持ち主となっていた。
そんなおばさんのなけなしの自我を支えるのは高校の頃に流行った寿司バトル漫画であった。
当時のグループのトップに「これ面白くね?」と布教されたものだが、ほぼ自我の無いおばさんの感性にも訴えかける面白さがそこにはあった。おばさんの自我は刺激され、見事に数十年もハマり続けて現在に至る。
特にマッチョと美少年キャラの組み合わせはおばさんのグループで覇権を握っていた上、トップの解釈が正しいと思っていたおばさん達は、トップの意向に反する解釈やお気に召さないものは「え?なんですかこれ。気持ち悪。よくこんな気持ち悪い思想持てますよね〜。頭どうかしてんじゃない?」と身内同士で馬鹿にすることを良しとしていた。
おばさん自身もグループの空気に従いマッチョを推していた。マッチョを推すと言っても、真のマッチョではなく、トップの解釈に沿ったマッチョを推していた。
というのも、トップの解釈を通してみると、マッチョはただのマッチョではなく、美青年に近いマッチョのように見えたからだ(おばさん自身に解釈を考察するほどの脳の余地は無かった)
もはやおばさんの目にはマッチョではなくマッチョの皮を借りた美青年に見えていた。もっと言うとおばさんが好きなのはマッチョではなく汚らしい不都合な部分は排除された美青年だった。
このようにしておばさんの自我はほぼマッチョに取り込まれていった。
ついでに美少年も好きなおばさんはマッチョに自己投影して美少年をどうにかする夢想をしていたので、マッチョに美少年以外が近づくとおばさんは自我を保てなくなり発狂してしまうようになった。
特に女性キャラクターは無理に等しかった。別に全ての女性キャラクターを恨んでいるわけでは無いが、推しに女性キャラクターが近づくのは地雷中の地雷だったので、そのような二次創作を見つけ次第仲間内で悪口を言い合い、ネットで晒し合い筆を折らせるまで創作者を追い詰めるのがおばさんの日常であった。
友情を知らぬおばさんには、こうしている時だけは仲間と魂が一つになった気がしていて、真の友情を感じていた。それは真の友情ではなく単なる同調圧力なのだが、おばさんは知る由も無い。
だが数十年もすればジャンルの盛り上がりも落ち着き、解釈違いは目立たなくなってくる。
おばさんは長らく(トップの)好みの解釈と好みの二次創作だけを摂取する穏やかな日々を生きていた。好みの二次創作を見つければ「ふわ〜〜〜!〇〇さんのイラスト、すっごいえっちでしゅう!」と感想を投げつけ、グループ共々歓迎した。
たまに現れる好みじゃない二次創作は仲間と徹底的に馬鹿にし、荒れ狂い、嫌がらせをすることで排除し、平穏を保っていた。
そうして周りからは「あの界隈はヤバイので近づかない方が良い」と噂が立ち、実際近づかれたくないおばさん達は「え?私たちを悪者にするんですか?ひどい。どうしかしてるんじゃないですか?」と威嚇し、近づかれないようにしていた。
そんな自分達だけのひっそりとした規模に界隈が収まっていた頃である。
何も知らぬ新参者がおばさんの巣食うジャンルの扉を叩いた。
叩いたというか、流れてきた。snsのリツイートで。
「小説を投稿しました!」キャプションには「なんでも許せる人向け」「この二人は永遠に公式です!」とある。
公式と言えるような組み合わせは数あれど、この漫画の二次創作はほとんどマッチョと美少年の組み合わせ、おばさん好みのお耽美ものばかりが生み出されている(おばさん達が界隈を取り締まった末にそうなったのだ)。
もしかしたらまたそのような二次創作が生み出されたのかも!
新規さん大歓迎で〜〜〜す!と思いながらおばさんは二次創作を査読した。
「オギャパアアアアーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!」
瞬間、おばさんの四肢は飛散した。
そこにあったのはマッチョと美少年のお耽美二次創作ではなく、おばさんが嫌悪して止まない、マッチョと………女!!!しかも下品でキャラ崩壊したようなドタバタギャグ!!!!もっともおばさんには全く面白くないのでギャグというより悲劇(トラジディー)だった。
「よくも……よくも俺の推しをッ………解釈ド無視キャラ崩壊させやがってッ…………!!!!」
おばさんは息絶え絶えになりながらやっとの思いで憤怒の意を口にした。
見るとおばさんのsnsアカウントのタイムライン上の同志たちも次々と断末魔をあげている。
そして…………グループのトップまでもが「許すまじ」の意向を示していたッ!!
これはおばさんにとってほぼ「GOサイン」と同義だった。
おばさんは決意した。
「奴を………駆逐(嫌がらせ)してやる…………ッ!!!!!」
だが、おばさんも鬼ではない。
まずはちゃんとオトナとして注意してあげようと思った。
恐らくこのわきまえぬ新参者は若者に違いない。
若者でなければこのような暴挙をすまいと思ったのだ。
おばさんは他の人生を知らないので、皆自分のような生き方をしていると思っていた。
ちょっと険悪な空気を出せばそれを察知し、すぐ従ってもらえる。そう考えていたのだ。むしろそれを察知出来ない者は愚の愚の愚、スーパー愚かと認定するような思考回路の持ち主だった。
おばさんは親切な注意文を作成し、相手に送りつけた。
内容はおばさん側の都合の良いものになっていたが、そうと決めつけることで相手も「ふええ、そういうことだったのかしら?あたし若いからわからなかったけど、この人の説明であたしが悪いことがわかりました。ごめんなさい。あなたが正しいです。」という気持ちになるだろうと思いそのような文章にしたのだ。
オトナなので「失礼しました。」も伝えるし、微塵も応援したくないが「応援してます。」も伝えられる。
あと反論されたくないので「返信不要です」と付け足した。
なんてオトナなの?私ってえらい。怒らず冷静に相手を注意できるなんて………
おばさんは自分に酔っていた。
ところが返信不要としたのに返信が来た。
この時点ではおばさんも驚かない。
愚なる若者は「返信不要」を読み飛ばしでもしたのだろう、そして謝罪しに来たのだろうと思っていた。
だがおばさんの思惑は外れ、どこにも「あたしが悪かったです」の言葉が無い。
それどころかこちらが送った文の内容が偏っているなど、逆に注意されている。
「何こいつ、わざわざ注意してやったのに。自分の立場わかってないんじゃないの?」
しかも微妙に年下のような扱いを感じる(というのも相手はおばさんの文章から滲み出る精神的未熟さから中高生と思い込みやり取りしていたからだ)。
おばさんは年功序列の世間の風潮に揉まれていた上、長い間新参者の解釈違い(年上はほぼ漫画を読まない上におばさんと同年代の解釈違いは殆どおばさんグループが追い出したために、新規のファンは自然と年下となった)に悩まされていたため、新参者=年下を格下と思い込んでおり、年下とみなされる事はおばさんにとってこの上無い屈辱であった。
おばさんはやれやれ、これだから若者は、と思いながらオトナなのでしっかりとした対応で返信した。
言葉も細かく「もっとこうした方が良いんじゃないかな?」とアドバイスをしてあげるし、文体も堅苦しいといけないから若干ラフにすることで優しさを感じる文章にしてあげた。
「なんて細かな気遣いができるオトナなの?」
これは流石に相手も「この人はあたしのためにこんなに気を遣ってアドバイスもしてくれるし、すっごいオトナ!尊敬しちゃいます!あたしが間違ってました。ごめんなさい!あなたが正しいです。」という気持ちになるだろう。
おばさんは自信満々に返信した。
文末は同じく「失礼しました。応援してます。」反論されたく無いので「返信不要です。」とした。
だが、再び返信が返ってきた。
「返信不要っつってんだろ?!」
おばさんはキレそうになりながら返信を読んであげた。オトナなので。
しかしどうにもこの愚なる若者はこちらの意図を汲もうとしない。
「私が悪かったです。ごめんなさい。あなたが正しいです。」その言葉が欲しいだけなのに一向に反省の陰が感じられない。
「こいつまじで馬鹿なんじゃねえの?」
おばさんはそう書こうとするのをぐっと我慢して、わかりやすいように例えを出しながら説明してあげた。
きっとこの若者はものすごい馬鹿で、馬鹿が故にあんなキャラ崩壊二次創作をつくるし、原作もちゃんと読んでないんだろうな。馬鹿だから。
そう思って「ちゃんと原作を読んだ方がいいですよ。」とアドバイスしてあげた。
ていうか、原作を読むのって最低限のマナーだし、それをしないで殺されずに済んでるのは我々の寛大さによるものだから生きてられるだけで感謝しろよな〜〜〜ゴミ!
おばさんは鼻をほじりながら返信した。
文末は礼儀として「失礼しました。応援してます。」そして「返信不要です。」反論されたくないから。
だが若者からの返信は止まらなかった。
「返信不要っつってるのにィィァアアアーーーーーッッ!!!」
おばさんは発狂しながらオトナなので返信を読んであげた。
前のやり取りでおばさんは「原作を読め」の話をスタートに、年上からのアドバイスとして創作する上の注意点を述べてあげたのだ。
だのに若者は「私は下手でも創作を発表した方がいいと思います」とか自分の意見を述べてくるッ!!!
聞いてねーよダボ!!!!
おばさんは意見をするのは好きだが意見されるのは好きでは無いッ!
「クソが………調子に乗るなよこのビチグソがァ………!」
おばさんは虫酸ランニングに身を捩らせながわかりやすく英語に例えながらアドバイスを続けてあげた。
するとだ!
「一度ご自分で創作なさってみては?英語も書いてみないと上達しないのと一緒で」
ウボボボボアアアアアアァァァァーーーーーーッッッッ!!!!!
ククククソバイスゥゥゥ〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!!
おばさんは全ての血管から血を噴き出させながら聞いてもいないアドバイス……すなわちクソバイスを食らって死んだ。
「この馬鹿が………クソッ!!ここここの私に………ククククソバイスをするなどぉ〜〜〜〜ッッッッ!!!」
おばさんには限界が近づいていた。
この愚なる若者……いや愚の骨頂チャンピオンをまともな人間と思って相手をしてはこちらがダメージを受けるだけ!!
相手を人間と思わず、もう馬鹿にしながら徹底的に叩き潰してこちらの意見に従わせないと…………!!!!
おばさんは若者への見下しの態度をありありと見せつけることに決めた。
こうすることで「ええ〜〜っ?もしかしてあたし、この人を怒らせちゃった?なんてことしちゃったんだろ!あたしが悪かったで〜〜す!ごめんなさい!あなた様が正しいです!」という気持ちになるだろうと考えたのだ。
おばさんがこうしてあなたを見下すのはあくまで相手のためよ。わかってちょうだいね。
そう思いながらおばさんは屈辱の一言ーーもっともおばさん自身にとっての屈辱の一言であり、相手にとってそうとは限らないのだがーーを筆頭に完全に見下すことにした。
その言葉とは…………
「お若い方のようですが」
おばさんにとって年下は格下。相手が年下でなくとも年下と決めつけられることで「あたしが年下ですって〜〜〜〜?!?!?!キィ〜〜〜〜ッッッッ!!!」となる、完璧な屈辱の言葉であった。
死角のないこの罵倒の言葉に、おばさんは酔いしれていた。
そして自分がこの言葉を送られたらなんと恐ろしいことか、と身震いした。
「自分で自分が………怖い!」
これは自分自身への賞賛であった。
相手がどんなダメージを受けるだろうと想像するだけで心がウキウキする。
苦しめ………そして喚け!!!!
おばさんは「返信不要です」と打ちながら返信を心待ちにした。(相手が返信不要無視マンということを完全に把握していた。)
早く返信しろ!そして己の苦しむ様を我が前に晒してくれ………!!!
おばさんの期待は膨らみ続けた。
ところが、だ。
相手の返事はおばさんの狙いに反して素っ気ないものだった。
「申し訳ありません。これ以上あなたの要望に応えられる気がしません。失礼しました。」
「ちょ待てよ」
おばさんは思わず口にした。
感想は???ねえ感想は????私の完膚なきまで叩きのめされるような屈辱の言葉への感想は????
おばさんは耐えられずすぐさま返信した。
今度はもう思いっきり見下した態度で、相手を苛立たせる最高の出来の最悪の文章を送った。
沢山の説教も交えて、自分が送られたら反吐が出ちゃうな、と思うくらいキモキモ嫌みたらし文章を送った。
それでも返信が来ない。
なんで?
ついちょっと前まで「返信不要」を無視して返信してたじゃん。
なあ……オイ………一体どうしちまったんだよ………。
「もしかして死んだ?」
半分冗談で、半分そうなってくれと思いながらおばさんはひとりごちた。
死んだら死んだで嬉しいから、早く訃報が来ないかな……。
己の邪悪さに吹き出しそうになりながらも、おばさんは返信を期待した。
だが一向に返信は来ない。
おばさんの気持ちは置き去りにされてしまった。
こんな仕打ちではもちろんおばさんの気は晴れない。
それどころか曇る一方で、どうにかこうにか相手がどうなったかを知る手立てが欲しい。
もしかすると私の見えないところで泣いたり怒ってたりして……………何でもいいから反応が見たい!!
おばさんはsnsで愚の骨頂チャンピオンのアカウントを検索した。
最新のツイートに無数の鍵アカウントからのリプライがついている
「おほぉぉ〜〜〜wかわいそw」
おばさんは笑顔になった。
これなら本当に死んだかもしれない。
死人に口なし。返信が来なくてもおかしくはない。
だが一目でもいいからこいつの苦しむ姿が見たかった……。
そう思っていた矢先、愚の骨頂チャンピオンの新しいツイートが追加された。
「私の不手際によりバタバタしちゃって申し訳ありません!こちらは大丈夫ですので、また何か思いついたら小説書きたいと思いま〜す!」
生きてる!
おばさんの心はいろんな感情が混ざり合い、踊った。
だがやはり死んでいて欲しかった。
この私を無視していたことがはっきりとわかったのだ。
「ここここのド畜生がァァァァ〜〜〜〜〜!!!!!!」
おばさんの心は再び怒りと憎しみに燃えた。
奴を絶対ぶっ潰す!!!!!
おばさんはそう決心し、最後のコメント……後に『醜いババア構文』と名付けられ伝説となったクソの塊のような文章を相手に送ることにした。
「ぐふっ……ぐぶっぶふうっ」
醜い笑い声がおばさんの口から漏れいでる。
おばさんは自分でも笑ってしまうくらい最悪最恐最醜の文章を書き上げたのだ。
こんな文章が書ける自分が天才すぎる。
二次とはいえ創作もしたことあることが幸い(相手にとっては災いでしかないが)して、どういう文章がムカつくかなどがわかる故、見てられない程の醜い文章が出来上がったのだった。
そのような力は嫌がらせではなく創作に使うべきなのだが、おばさんにはもうそのような考えに至れる程の人間力は失っていた。
もう既におばさんを超えた醜いババアと化していたのだ。
だがおばさん……醜いババアに後悔は無かった。
今の私が求めるのは人間としての矜持ではなく、この愚の骨頂チャンピオンの苦しみ悶えた末に出てくる喚き、阿鼻叫喚、謝罪、絶望、憤怒…………何でも良いから負の感情全てを吐き散らして地獄に落ちて欲しい!!!
それだけが醜いババアの願いだった。
「くく…………………ぐっふっふっふっふ……………………
ぐ わ は は は は はーーーーーーーっっっっ!!!!!!
苦しめ苦しめい!!!!!!
そして死ねい!!!!!!!
この神なる私に刃向かったことを後悔するが良い!!!!!
オラァッッッッッ
喰らえッッッッ!!!!!!
これが我が最凶最低最終奥義……………………
醜 い バ バ ア 構 文 だーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!」
ババアは構文を送りつけ、
高らかに笑った。
今ここにババアを邪魔する者はいない。
ババアこそが頂点であり…………………………神!!!!
それを若者に知らしめてやったのだ。
ババアの心は一寸の曇りも無く、青空のように晴れ渡り、真円の太陽のように満ち足りていた。
ババアの人生で最も醜く、最も輝いていた瞬間であった。
ーーーーその後。
ババアの日常には何も変わりはなく、依然として自分のグループに寄生し、好きな二次創作を褒め称え、嫌いな二次創作を叩き潰す日々を送っている。
だが、嫌いな二次創作は少し叩くとすぐ消えてしまい、あの時のような………愚の骨頂チャンピオンのような、張り合いのある者は現れなくなってしまった。
好きなものに囲まれていてとても幸せだが、ふとあの愚かな創作者を思い出す。
奴のことはその後、勝利(とババアは感じていた)の記念にブロックしてしまったためにどうなったかババアは知らないのだ。
噂によるとハリウッドに行ったとか聞いたような気はするが……。
ババアには興味も無い。
だがあの闘いの日々は、ババアのババア力を限界まで引き上げた思い出として、ババアの青春の1ページを飾っていた。
「ま、お前の力は………この私が認めてやらんでもない、が、な…………」
ババアはそう笑って、次の解釈違いを叩き潰すため、新規の愚なる創作者に醜いババア構文を送りつけた。
おわり
おばさん構文進化形態大全 ユダカソ @morudero
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