Funeral

件名:無題


本文:

アナタ、わたしはアナタにお伝えしなければならないことがいくつかあります。


一つ、妾は妊娠しました。

腹にはアナタと妾の子供が居ます。


二つ、妾はアナタです。

意味がわかりませんか。

妾は未来からきたアナタ自身ということです。

アナタは、妾を殺しましたね。だから次は、妾はアナタを殺します。

アナタが壊した妾の子宮、それを再建できる人を見つけたのです。子宮を潰したら妾が居なくなったのを覚えているでしょう。アナタのカラダに子宮が戻れば、妾も戻ります。更に、アナタが妾にやったのと同じことを妾がアナタにすれば、このカラダからアナタは消え、アナタのカラダは完全に妾のものになります。

つまり妾はアナタであり、アナタの姉です。アナタが誰より恐れた姉に惚れるなんて、マッタク滑稽ですね。


三つ、妾はアナタの母です。

わかりますか。

妾とアナタは同じ人間ですから、はらの子は、妾とアナタと全く同じ遺伝子を持った人間、つまりクローンです。

妾はこのあと、成すべきことを済ませたら再び過去に向かいます。アナタが生まれて、妾が生まれなかったあの時に。

ですが、今度こそは妾が生まれてやる。もう胎の中でお前に喰われるようなヘマはしない。

たとえ母としての妾が死んでも、次は赤ん坊の妾が生まれて、今度こそ妾は、妾の人生を全うするんだ。

全てはこののための計画プランだったのです。時間移動タイムスリップも、お前に近づいたのも。


どうですか。驚いていますか。理解できないでしょうか。

ええ、このメールを読んだ時にお前が何を思ったか、このカラダは覚えています。

こう思ったでしょう、「僕はこのカラダを渡さない、子宮の再建手術など受けない」と。

お馬鹿さんですね。

これを読み終わる頃、お前は気を失います。お前がいつ、何をするのか、妾はすべてわかっているのですよ。ちょっとしたタイマー仕掛けで、部屋に麻酔ガスを少しずつ充満させることなど造作もないのです。

そうして意識を失ったお前のその忌々しい陰茎を、妾が手ずから切り取ってあげます。

それから、腕のいい医者のところに運び込んで妾の仕事は終わりです。

お前の人生は、これを最後に全部オシマイです。


ソラ、もう逃げようにもカラダが動かないでしょう。意識がモウロウとしてきたでしょう。

だけど心配しないで。怖がらないで。お前は死ぬけれど、妾になるのだから。

お前が愛した妾になるのだから。


それではサヨナラ、世界一憎くて、世界で唯一愛する弟。

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KSK ナツメ @frogfrogfrosch

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