【3分で怪談】見えてますよ、後ろにいる『ソレ』

松本タケル

新入社員のそいつが言うには

これは、とある若い夫婦の夕食時の会話。

夫 「今日、新入社員と一緒にお昼を食べたんだけど、そいつが不思議なことを言うんだよ」

妻 「男性? 女性?」

夫 「男性だよ。そいつ、どうも見えるらしんだよ」

妻 「見えるって何が?」

夫 「人にいているやつ。背後霊はいごれいみたいな」

妻 「それってのろい的な?」

夫 「良い場合もあれば、悪い場合もあるんだって。一人の場合もあれば、複数の場合もあったりするらしい」

妻 「作り話じゃないの?」

夫 「そいつ、新入社員だけど優秀で仕事の覚えも早い。うそを言う奴に見えないんだよね」

妻 「で、あなたも見てもらったの?」

夫 「見えてるらしいけど他人には良いとか悪いとかを告げないんだって。気持ち悪がられた経験があるらしいんだ。今回もオレがそいつのうわさを聞いて無理やり話させたようなところがあるし」


妻 「背後霊はいごれいって先祖がくの?」

夫 「いろいろだって。大昔の先祖の場合もあるらしいよ。見たな中で最も古いのは、『縄文時代かよ』って服装の人が憑いてるケースもあったそうだよ。動物の場合もあれば生きてる人のがいてる場合もあるって」

妻 「こわっ。見たくないわそれ」


夫 「で、そこからが不思議な話なんだ。そいついわく、『』って言うんだよ」

妻 「え、そうなの? 私、見たことないけど」

夫 「俺だってないよ。そいつとの会話をちょっと再現してみるよ」


――――――

そいつ 「人間は誰でも自分の背後に憑いている『ソレ』が見れるようにできているんですよ。僕みたい他人の『ソレ』まで見れる人間は、とても少ないですが」

オレ 「オレには見えないけど」

そいつ 「先輩、人間の視野角しやかくって知ってますか? 目で見ることができる範囲です。人間って最大でも横方向に200度くらいまでしか見えないんですよ」

オレ 「で?」

そいつ 「人間の背後霊は、。つまり、右を向いても左を向いても視野角しやかく

オレ 「え? じゃあ見えてはいるけど、どうやっても見られないってこと?」

そいつ 「そういうことです。自分の目でしか見ることができないので、鏡で見ることはできないです。当然、ビデオにることもできません」

オレ 「それは残念だな」

そいつ 「神様って矛盾してますよね。見られるようにしているのに、結局、見られないなんて」


――――――

夫 「こんな感じだよ」

妻 「でも、その話って矛盾してない?」

夫 「どこが?」

妻 「一般の人は誰も自分の『ソレ』を見ることが出来ないなら、新入社員の彼はその事実をどうやって知ったの? その彼は誰のでも見れるので一般人とは違うわけだし」

夫 「オレもそれが不思議で聞いてみたんだよ。そうすると、一般人でもごく稀に自分の『ソレ』を見ることができる人がいるって言うんだ」

妻 「稀に?」

夫 「そう。スポーツ選手が多いんだって。スポーツ選手って視野が重要じゃん。だから、視野角しやかくを広げるトレーニングをするらしいだよね。そうすると稀に自分の『ソレ』の端っこをとらえらえられる人がいるんだって。全部は見えないらしいけど」

夫 「そういう人の話を聞いた新入社員の彼は、自分の見ているものと一致していたので、『誰でも見えてる』って結論に至ったんだって」

妻 「・・・・・・」

夫 「どうしたの?」

妻 「私って・・・・・・中学、高校、大学までバレーボールやってたじゃん」

夫 「全国大会まで行ったんだよね」

妻 「重要なんだよね視野って」

夫 「?」

妻 「首をこうやって左右に早くってみるでしょ・・・・・・」

夫 「ると?」

妻 「視野の端っこに見えるだよねぇ。モワっとした何かが」

夫 「・・・・・・」

妻 「スポーツ始めたころからずっとだったんで気にもしなかったけど」

夫 「今も見えてる?」

妻 「うん、こうやって首を早くると・・・・・・ほら、見えた」

妻 「しかも、これまで白っぽかったんだけど、最近、黒っぽくなってきたんだよね。どうしてかな?」

妻 「まあ、なぞが解けったってことでスッキリしたわ。ハハハ・・・・・・」

 ケタケタと笑う妻を見て、夫は全身に寒気が走った。

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