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「お前ら……気づいてへんのか?今でも
朝顔はそう言うと、向こう側の校舎の屋上の方向にちらりと視線を向けた。向こうの屋上に四つの人影が微かに見える。しかし、私以外の四人にははっきりと見えている様であり、紫陽花もそれを確認するとちっと忌々しそうに舌打ちをした。
「なんや……あの女狐達。うちら
一体、なんの事だろうか?私は凛の側に寄ると、
「ケルベロスとは三つの頭を持つと言われている冥界の番犬。そして、犬山朝顔、夕顔、紫陽花が三姉妹という事もあり、そして、その三人の強さと揺るぎない結束から、そう呼ばれる様になったの」
犬山三姉妹の方を見ると、もう、私達の事は眼中にない様子で、向かいの屋上にいる人達を睨みつけている。
「おや……どうやら
向かいの屋上から眺めていたのは四人の二年生達。結構離れているのに関わらず、双眼鏡等を使わずに肉眼で五人の様子を伺っていた。
「さすがは……
「まぁ……隠す気なんかなかったんだけどね。……で、どうするんだい、玉ちゃん?」
玉ちゃんと呼ばれた一際目立つ長くふわりと巻いた銀髪に、少し濃ゆいが整った綺麗な顔立ちをしている少女、
「どうしようもこうしようも、いくら
校舎と校舎の間の距離を測るかの様に見ていた玉藻がふぅっと大きなため息をつく。
「なら、私らが
玉藻の後ろにいた二人の少女がにやにやと笑みを浮かべながらそう言うと、屋上の出入り口へと向かっていく。
「その必要は無いわ……」
二人が屋上の扉に手を掛け開こうとした時に、玉藻が振り向きもせずに止めた。
「なんで止めるんだい、玉ちゃん?君なら今が奴らを潰すチャンスな事ぐらい分かっているだろう?」
止められた少女、
「まだ、役者は揃っていないわ……」
朱里と緣の方へと振り向く玉藻。その顔にはにやりとした笑みが張り付いている。
「役者?」
すると先程から黙り込んでいたもう一人の少女、
「そう……一年生の主要メンバーよ」
「……ふん、なるほどね。玉藻はあの子らも出てくると思ってるんだ?」
「当たり前でしょう?あの子らが、黙って指を咥えていれるかしら?」
「……無理だろうね。特に……
そう返した空子が玉藻の方へと見た。仙子と天子も同じ様に視線を向けている。
「……あの子は、私を嫌っているから、
葛葉と言う名前が出ると少し寂しそうな顔になった玉藻。だが直ぐに元の表情に戻ると、三人を促し屋上を後にした。
この時の私は
ていうか、この物語りは私を主人公としたほのぼのハートフル青春恋物語ではなかったのか?なんて、疑問が頭の中を駆け巡る今日この頃であった。
櫻子の恋日記~にゃんことわんこと……時々、きつね ちい。 @koyomi-8574
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