7
二人の体がぶつかり合う。
「余所見してんなやっ!!」
ダメージの回復した紫陽花が私へと攻撃を再開してきた。しかし。まだ完全に回復していないのか、足元がふらついているのがわかる。
「足元がふらついているわよ?」
「黙らんかいっ!!この、まな板娘がっ!!」
「誰がまな板娘ですってぇっ!!」
きぃぃぃっ!!また、まな板娘と言ったなっ!!私は連撃を浴びせてくる紫陽花を裁きつつ反撃している。そして、足元の少しふらついている紫陽花を徐々に押していく。
「えぇんか、黒猫。あちらでも再開しよったで?」
「……櫻子は負けませんよ」
「へぇ……出会って僅かなんに信頼しとるなぁ」
にたりと笑う夕顔に、きっと睨みつける凛。そして、小さな声で独り言の様に呟いた。
「僅かではありません……私は……以前から」
しかし、その呟きを聞き逃さなかった夕顔が驚いた様な顔で凛を見た。
「……あいつん事、知っとんたんか?」
「……はい」
「……そうか……あの、泣き虫凛ちゃんが強うなろうとした切っ掛けの子かいな」
「ご想像にお任せします」
「……まぁ、ええわ」
夕顔が凛へと仕掛けようと踏み込んだ時、どんっと勢いよく屋上出入口の扉が吹き飛んだ。思わず四人の動きが止まり、出入口の方へと視線が向いている。
「何しとんねん、夕顔に紫陽花」
扉の亡くなった出入口から現れた女の子に私は釘付けとなってしまった。何故なら、その女の子は夕顔と紫陽花と同じ顔をしているのである。もちろん、髪型は違う。長い栗色の髪を一つに結んでいる。どうやら彼女達は双子ではなく三つ子だったらしい。
「ちっ、朝顔け」
吐き捨てる様に言うと、夕顔はそっぽを向いてしまった。紫陽花も私から距離を取ると、ぼりぼりと頭を掻いている。
「言っとったはずやで?黒猫達には手ぇ出すなって」
夕顔の方へと歩み寄りその前に立つとぎろりと睨んだ。そんな朝顔を夕顔も負けじと睨み返す。二人の間に不穏な空気が流れている。それを察した紫陽花が二人の元へと急いで駆け寄った。
「先に手ぇ出したんは、あっちからや」
紫陽花が朝顔へと言うも、朝顔は夕顔を睨みつけるのを止めない。それどころかさらに鼻と鼻が当たるのではないかと言う距離まで近づいた。
「そないな事、関係あらへん。お前ら、一年生同士でやりおうてどないする。その隙を二年、三年が狙うとるのが分からんけ?」
「ふへっ、なんや、そんなに上級生が怖いんか?」
夕顔が朝顔を挑発する様な口調で言うと、ヘラヘラと笑っている。そんな夕顔の挑発には乗ってこない朝顔。しかも、それだけではなかった。
「そや、怖いで?」
「……」
「当たり前や?お前ら、あいつらがうちらん隙ぃ伺っとるん知っとるやろ?こんな状態やと、呆気なくぱくりと喰われてしまうわ」
挑発に乗るどころか、あっさりと認めてしまったのだ。
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