第62話
轟音が辺りを支配する。
地面がぐらぐらと揺れ、周囲で村の住居が倒壊する。
ソフィアの魔法をまともに食らったモンスターの群れは、その大部分が爆散し、息絶えた。
その爆心地にいた俺は…障壁魔法で周囲を固め、なんとか爆発の被害を免れていた。
「すげぇな…」
俺は周囲を見渡した。
俺を中心にして周囲に大きな穴があき、クレーターのようになっている。
焼け焦げが地面からは、未だ煙が立ち上っていた。
「よくやった。ソフィア」
障壁魔法を解除した俺は、仲間の元へと戻る。
…と、ガレスが少し怖い顔でこちらへ近づいてきた。
「おい、アルト。お前今何をした?」
「ん?何を、とは?」
「モンスターが一斉にお前の方へ向かって行ったろ」
「もちろんデコイ魔法だが?」
「デコイ魔法…お前、そんな器用なことも出来るのか…」
「いつか役に立つんじゃないかと思ってな。支援職ながら、覚えておいたんだ」
「相変わらず無茶苦茶な…って、そうじゃなくて!!お前なに勝手に行動してんだ!!」
「勝手に…?」
「ああ。モンスターのヘイトを一気に集めて自分ごと魔法で吹き飛ばすとか…正気か!?」
「問題ない。爆発は障壁魔法で防げばいいんだ」
「あのなぁ…」
ガレスがガリガリと頭を掻いた。
俺はガレスが言わんとしていることを理解しかね、首を傾げる。
すると、今度はソフィアが口を開いた。
「アルト。あーゆーのはもうやめて欲しい」
「…?」
「自分ごと私に魔法を撃たせた。あなたが怪我をしたらどうするの?」
「怪我…?まぁ、ソフィアの魔法の威力が俺の障壁魔法を貫通する可能性は確かにあったが…しかし、ああするより他に手がなかった」
「うーっ、そうじゃなくてぇー…」
ソフィアも頭を抱える。
俺はますます首を傾げてしまう。
するとエレナまでもが…
「アルト。二人のいう通りよ。確かにあなたは合理的な選択をとったかもしれないけど…でも、たとえ誰かの命を救うためだったとしても、自分を犠牲にするような戦い方はやめてほしい。私たちはあなたの仲間だから…心配なの。お願いだから、無茶だけはやめて」
「…」
そこまで言われ、俺はようやく彼らが俺のことを心配してくれているのだと気づいた。
「…わかった。もうやらないことにする」
自分のしたことを否定されたわけだが、不思議と嫌な気持ちはなかった。
三人が本気で俺を心配してくれているのが伝わったからだ。
そして同時に、何か温かいものを胸のうちに感じだ。
仲間とはこういうものだったかと、久しく忘れていた感覚を思い出す。
「アルト。俺にはリーダーとして、パーティーメンバーの命を守る義務がある。今後は、お前が一方的に危険になるようなことはしないでくれ。いいか?」
「わかった」
俺が頷くと、ガレスが安心したように破顔した。
…と、そんなときだ。
『モンスターを一箇所に引きつけ、まとめて始末したか…』
『やはり人間ども、侮れない…』
『前回のようなヘマはしない…』
『わかっていればあのような小細工、我らに通用などしない…まとめてここで始末してくれる…』
森の中から4つの人影が現れ、こちらへと歩いてくる。
「「「…っ」」」
側で俺以外の三人が息を呑んだ。
無理もない。
近づいてきているのは、全員紫色の肌と角を有した、魔族だったからだ。
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