第48話
街に迫っていたモンスターの大群を退けた翌日。
街では、勇敢に戦った冒険者たちのための宴が開かれていた。
その日のみ、街の全ての飲食店が飲み食いタダとなり、あちこちで一般市民も巻き込んだどんちゃん騒ぎとなっていた。
特に讃えられたのは、防衛戦勝利に一役勝った『彗星の騎士団』と、堀を作る作戦を考え、指揮を取ったトールだった。
聞けば、トールは『彗星の騎士団』の前のリーダーであり、彼のおかげで、防衛戦の序盤を有利に進めることができ、ガレスやソフィアが到着するまで持ち堪えられたということだった。
彼には後日、街の政治の重役たちから栄誉賞が贈られるらしい。
また、街を守った冒険者たちには、ギルドから一人当たり金貨100枚の礼金が払われることとなった。
それからさらに翌日。
俺たち『彗星の騎士団』の四人は、朝から冒険者ギルドへ向かっていた。
昨晩、パーティーホームにギルドから呼び出しの手紙が届いていたのだ。
重大な知らせがあるため、メンバー全員でギルドに足を運んでほしいとのことだった。
「一体なんだろうな?」
ガレスが首を傾げる。
「さぁ?私たち、活躍したからたくさん礼金をもらえるとかそういうことじゃない?」
「どうでしょうね。あまり浮かれない方がいいんじゃないかしら。私たちの到着が遅れたから被害が拡大したとかで、被害請求されるかもしれないわよ」
「はぁ!?何よそれ!!」
「あくまで可能性の一つよ」
「いや、流石にそれはないと思うが…」
ソフィアのネガティブな予想に、エレナが声をあげ、俺が嗜める。
「にゅ!にゅ!」
横で、俺と手を繋いでいるピンク髪の少女が飛び跳ねた。
あれから。
この謎の少女は俺たちのパーティーホームで生活している。
少女の実態がわかるまでは、口外せず、手の届くところに置いておくという方針を昨日決めたばかりだった。
しばらくは一緒に生活していくことになるだろう。
「お前はなんだと思う?被害請求されたりすると思うか?」
「の?」
「すまん。わかんないよな」
「むん!」
決して知能が低いわけではないようだが…
行動だけ見ていると、三歳ぐらいに思えてくる。
本当に謎が多いというか…
一体なんなのだろうか、この少女は。
「可愛いわよねぇ…」
ソフィアが少女の挙動を見て頬を緩めている。
どうやら幼子が好きらしいソフィアは、このピンク髪の少女にゾッコンだった。
少女が誰の部屋を使うか、という話になった時も、真っ先に立候補していた。
結局この子がなぜか俺から離れないために、俺の部屋で一緒に暮らすことになったんだが…
これは懐かれたと見ていいのだろうか…?
「そのうち名前も決めてあげなくてはいけないわね…長い付き合いになりそうだし…」
エレナがそんなことを言う。
「おいおい。あんまり感情移入しすぎるなよ。いつ手放すか分からないんだからな」
ガレスが、ソフィアとエレナに釘を刺した。
「えー!!ヤダヤダ!もうこの子は私たちパーティーの一員でしょ!?手放すなんてダメなんだから!!」
「おい…お前、こいつが大量発生の原因だってこと忘れてるだろ…」
駄々をこねるソフィアに、ガレスがジト目を向ける。
そうこうしているうちに、ギルドにたどり着いた。
俺たちは両開きの扉から、中へと入った。
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