第43話
魔族たちに囚われていたピンク髪の少女には、モンスターを生み出し、そして操る力があることがわかった。
俺は少女と真正面から向き合う。
「聞いてくれ。大切な話だ」
「たぁ?」
少女が俺の言葉を正確に理解できるとは思っていない。
だが、先ほどのウルフとのやりとりを見て、全く知能が発達していないこともないとわかった。
身振り手振りを交えれば…俺の意図が伝わるかもしれない。
「さっき、モンスターを操ったろ?あれをたくさんのモンスターに対しても出来るか?」
「んあ」
「今、俺の街がモンスターの大群に襲われているんだ。街の人々を助けたい。協力してくれないか?」
「うみゅっ!」
「おお!」
ギュッと少女が俺の手を握ってきた。
俺にはそれが、同意の意思のようにも思えた。
「わかってくれたか!」
「あうあっ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねる少女。
…少し不安だが。
今は俺の言葉を理解したのだと信じよう。
「よし。なら街に向かおう。捕まっていてくれ」
「んあっ!!」
俺が少女を抱き上げると、ギュッとしがみついてきた。
「待っていてくれ、街のみんな!!」
俺は自らに支援魔法を使い、高速で街へと向かった。
「…っ…まじかよ、なんて数だ…」
森を抜けた俺は、街へと続く草原を走っていた。
前方に街へと向かって押し寄せる無数のモンスターが見えた。
数は…おそらく千は超えているだろう。
ドゴオオオオオン!!
見ていると、時々轟音が響きわたり、モンスターが強力な魔法でまとめて吹き飛ばされていた。
あの威力は…おそらくソフィアの魔法だろう。
彼らのおかげだろうか、これだけの大群が押し寄せているにもかかわらず、モンスターはまだ街の内部には侵入していないようだった。
先にガレスとソフィアを向かわせたのは正解だったな。
俺は街が蹂躙されていなかったことに安堵しながら、足を止めた。
そして抱いていた少女をおろして、モンスターを指さした。
「聞いてくれ。あそこで今、俺の仲間がモンスターと戦っている」
「もんっ!」
「モンスターに命令して、森の中に帰るように命令できないか?」
「みゃ?」
小首を傾げる少女。
俺はモンスターの大群と森の方を交互に指差しながら、必死に少女に伝えようと努める。
すると…
「あんあっ!」
少女が瞳を輝かせて、飛び跳ねた。
わかった!とでも言いたげな顔。
「た、頼んだ…」
俺が頷くと、少女はゆっくりとモンスターの大群を見据えた。
「すぅううううううう」
「ん?」
それから大きく息を吸い込み…
「だめえええええええええええええええええええええええ!!!」
周囲の空気を震わせるような大声を辺りに響き渡らせた。
「…!?」
一瞬、爆発的に少女の存在感が膨れ上がったように思った。
ドラゴンの咆哮とて…ここまでの威力はないだろう。
俺が思わず後ずさる中、次の瞬間、信じられないことが起こった。
し…ん…
「え…」
街へと向かって躍動していたモンスターの群れが、時間が静止したようにピタリと動きを止めたのだった。
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