第41話


「うわあああああ!!」


「ぎゃあああああ!!」


周囲に冒険者たちの絶叫が響き渡る。


押し寄せるモンスターによって、街を防衛する冒険者たちが一人、また一人とやられていった。


「くそっ…やはりこれだけの数を私たちだけで捌き切るのには無理があったか…!」


後方で前陣が撃ち漏らしたモンスターを倒していたトールが、あたりの惨状に表情を険しくする。


すでに死体で埋められた堀は、その機能を果たしていない。


純粋なモンスターと冒険者たちとの戦闘になっているが…他勢に無勢。


冒険者たちは健闘しているものの、モンスターたちは街へ向かってじわりじわりと侵攻してきていた。


「Aランクたちはまだなのか!!」


こうなってくると、彼らのみでモンスターを討伐するのは無理である。


希望があるとすれば、それは各地に遠征しているAランクパーティーが街に帰還して戦いに加わってくれることなのだが…


「Aランクたちはいつくるんだ!?」


「畜生!!俺たちだけじゃ無理だ!!」


「このままだと全滅するぞ!!」


冒険者の虚しい叫びがトールの耳朶を打つ。


トールは、救いを求めるようにモンスターの後方へと視線を向けた。


「ん…あれは…」


人影が二つ。


こちらに向かって近づいてくる。


「あのシルエットは…まさか…!」


トールは見覚えのあるシルエットに、急いで遠視の魔法を使う。


「ガレス!!それにソフィア!!」


トールは歓喜の声を上げた。


こちらに近づいてきているのがかつて自分が率いた『彗星の騎士団』のメンバーだったからだ。


「駆けつけてくれたのだな!私の仲間が!!」


絶望していたトールの中に希望が生まれる。


「みんな!!あそこをみろ!!私の仲間が…Aランクの冒険者たちが間に合ったぞ!!」


「えっ!?」


「どこだ!?」


「本当か!?」


冒険者たちがトールの指さす方向をみる。


そして、こちらに近づいてくる二つの人影を見て歓喜の声を上げた。


「うおおおおお!!本当だ!!」


「ようやくだ!Aランクが間に合ったぞ!」


「あれはガレスとソフィアか!?実力派の『彗星の騎士団』ならきっとやってくれるはずだ!!」


悲壮感を漂わせていた冒険者たちに一気に火がついた。


その直後。


ドゴオオオオオオオオン!!!


「「「「…!?」」」」


モンスターの群れの中心で信じられないほどの大きな爆発が起こった。




「急げソフィア!もう戦闘は始まってる!!」


「ええ…わかってるわ!!早く行かなきゃ…!街に残ってる冒険者だけだと、すぐに全滅してしまう可能性がある!」


アルトたちと別れたガレスとソフィアは、街へ向けて森の中を疾走していた。


彼らの元には、モンスターの鳴き声、冒険者たちの悲鳴と怒号が届いてきていた。


「怪しい気配とやらのことはアルトとエレナに任せよう。たとえそれがこの騒ぎの元凶だとしても、あいつらならうまく収めてくれると信じてる」


「ええ、もちろんよ!!私たちのやることは、とにかく街を襲ってるモンスターを蹴散らすこと。違う?」


「違わねぇ!!大正解だ!!」


彼らはますます走る速度を上げていく。


やがて森を抜け、街へと続く草原へと出た。


「…っ!!嘘でしょ!!」


「まじかよ!!なんだあの数は!!」


前方に、無数のモンスターの群れ。


ギルドの手紙にあった通り、数千は居そうだ。


「しかし、かなり死体も多いな…街の残っていた冒険者たちが健闘してくれたおかげだろう!」


「この状況でも逃げださずに戦った彼らの勇姿に報いないと!!」


「そうだな!よし、ソフィア。もう射程圏ないだろう!一発かましてやれ!!」


「言われなくとも!!アルトの支援魔法で強化された一発をど真ん中に撃ち込んでやるわ!」


立ち止まり、詠唱を始めるソフィア。


魔力を練り上げ、杖をモンスターの群れの中心に向け、それから長い詠唱を引き結んだ。


「エクスプロージョン!!」


直後。


ドガアアアアアアアアアアン!!


周囲の地面を揺らす凄まじい爆発が起こった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る