第7話


「アルトさん。今日は本当にありがとうございました」


ギルドを出た途端、ユートがペコリと頭を下げてきた。


「こちらこそありがとう。俺なんかとパーティーを組んでくれて」


俺もユートに向かって笑いかける。


「そ、そんなっ…!どうしてアルトさんがお礼なんか…!たくさんアドバイスまでもらったのに…!」


「楽しかったからな。今日一日。これからも頑張れよ、ユート。カンナ。そしてエミリ」


恐縮するユートに、俺は笑ってそう返す。


あれから。


ゴブリン七体の討伐目標をクリアした俺たちは森から街へと帰還し、たった今、報酬を受け取ってギルドを出たところだった。


クエスト報酬は銀貨五枚。


ユートは指導料含めて全額俺にくれると言ったが、金のない駆け出しからクエスト料をかっぱらうのは流石に気が引けた。


結局、俺はクエスト料は一切受け取らなかった。


ユートはなんとしてでも俺にわけまえを渡そうとしたが、「将来お前たちが出世した時に恩を売っておくと得だろ?」というと渋々全額受け取ってくれた。


駆け出し冒険者の懐具合ってのは痛いほどわかるからな。


俺も今は金がないが、彼らほどではないだろう。


「アルトさん、私からもありがとうございました。本当にいろんなアドバイス、ためになりました。私たち、これからも頑張っていきます」


「アルト…さん…ありがとう…エミリ、自身、ついた…」


ユートに続き、カンナとエミリにも頭を下げられた。


俺は照れ臭くなって頭を掻いてしまう。


「いいっていいって。三人ともこれからの活躍を期待してるよ。また、何かあったら俺に声をかけてくれ。しばらくはパーティーも組めずに、ソロだろうから」


「はい!ぜひ」


「よろしくお願いします!」


「また…アルトさんと…冒険に、出たい…」


「おう、じゃあな」


俺は三人と手を振って別れた。


「あ…そうか…」


一瞬、『緋色の剣士』のパーティーホームに戻ろうとして慌てて方向を変える。


「なんか…元気をもらったなぁ…」


今日の冒険では、お金は一銭も手に入らなかった。


だが、あの三人を見ていると、昔を思い出すようでなんだか元気をもらった。


「はぁ…いつから変わっちまったんだろうな、俺たち」


パーティーを追放される時に投げつけられた、暴言の数々が頭の中に蘇る。


いつからあの三人は俺のことを役立たずだと思うようになったのだろうか。 


最初は違ったはずなのだ。


駆け出しの頃は、互いを尊重しあい、常に協力する、いいパーティーだった。


だがあの三人は変わってしまった。


功績を積み重ねるにつれ、いつしか、サポート役の俺を見下すようになったのだ。


「俺はずっと仲間のつもりだったんだがなぁ…あいつらは違ったんだろうな…」


そんな虚しい呟きと共に、俺は夕方の街道を歩いたのだった。



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