第2話
Sランクパーティー『緋色の剣士』のホームの2階、自室に戻った俺は、荷物をまとめるために、戸棚を開けた。
「あ、あれ…?」
そして首を傾げる。
戸棚の中に何も入っていなかったからだ。
おかしい。
ここに武器や装備を置いていたはずなんだが…
「あー、お前の装備なら売ったぞ」
「はい…?」
後から2階に上がってきたカイルがそう言った。
「う、売った…?」
「当然だろ?今までのツケを返してもらうためだ」
俺はカイルの言葉が理解できなかった。
ツケ?
俺は別にパーティーメンバーから金を借りたことなんて一度も…
「お前は今まで実力がないのにこのパーティーに居座って散々美味い汁を吸っただろ?だから、そのツケを返してもらったんだよ」
そう言って、カイルが懐から革袋を取り出した。
ジャラリとカネの音がする。
カイルの表情が嫌らしく歪んだ。
「まぁまぁの金になったぜ?この金で一ヶ月は豪遊できるな」
「…っ…外道がっ」
我慢できず、思わず暴言を吐く。
だが、後悔はなかった。
こいつら人間じゃない。
追放するだけならまだしも、別に気概を加えたわけでもない俺にこんな仕打ちまでするなんて…
ここにしまってあった装備はどれも長年使い込んだものばかりで、愛着があったのに…
俺にとってはどんな高級な装備よりも価値ある、大切なものだったのに…
それをこいつは、無断で売り飛ばし、その金を遊びで散財するつもりらしい。
「ぶひゃひゃ。なんだよその表情。もう泣きそうじゃねーか」
悔し涙を流しそうになっている俺を、カイルが嘲笑う。
俺はこれ以上カイルと一緒にいると殴りかかってしまいそうだったために、さっさと階段を降りて、ホームを出た。
「くそ…くそくそくそ…」
悪態を吐きながら、どんどんギルドから遠ざかる。
「じゃーな負け犬。2度と俺たちに関わってくるんじゃねーぞ!」
去り際、2階の窓が空いて、カイルがそんな言葉を投げかけてきた。
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