あれ?気づいたら俺を役立たずだと言って追放したSランクパーティーが崩壊してて、逆に温かく迎え入れてくれたAランクパーティーがSランクに昇格していたんですが?
taki
第1話
「アルト。今日限りでお前をパーティーから追放する」
「はい?」
朝。
パーティーホームで目覚め、リビングで朝食をとっているとパーティーリーダーのカイルに唐突にそんなことを言われた。
思わず口をぽかんと開けてしまう。
「はい?じゃねぇ。お前を俺たちのパーティーから脱退させるって言ってんだよ。さっさと出て行けよ」
苛立ったようにカイルが言った。
本当にいきなりすぎて、空いたくちが塞がらない。
なんだこれ。
ドッキリか?
「何ぼんやりしてんだ?俺の言ってること理解できたのか?」
「言葉の上ではな…でもなんで急に?」
そう尋ねると、カイルははっと小馬鹿にしたように息を吐いた。
そんなこともわからないのか、とでも言わんばかりの表情。
「決まってるだろ。お前がなんの役にも立たない雑魚だからだ」
「…っ」
雑魚。
はっきりとそう言われ、ズキリと心に痛みが走る。
「ま、待ってくれカイル。何かの冗談だろ?本気で言ってるのか?」
俺は雑魚という暴言を訂正して欲しくて、カイルにそう言う。
だが、カイルはいつまで経っても発言を撤回することなく、ゴミを見るような目で俺を見ていた。
一体なんなんだこれ。
俺はますます混乱してしまう。
と、その時だ。
「いい加減にしなさい。往生際が悪いわよ、アルト」
そんなセリフとともに洗面所の方から魔法使いのミシェルが歩いてきた。
カイルと同様、蔑むような視線を俺に向けている。
「み、ミシェル…!よかった!今朝はカイルが変なんだ!お前からも説得してくれ!」
「は?変なのはあんたでしょ。カイルは正常よ」
「え…?」
「自分の立場を弁えなさい。役立たずのアルト。あんた今まで私らのおかげで飯が食えてたんだから、出ていけって言われたら素直に出ていきなさいよ」
棘のある口調で、ミシェルが吐き捨てた。
「な、なんだよそれ…お前まで俺を役立たず扱いするのかよ…?」
「ミシェルだけじゃ…ない。私もアルト…役立たずだと…思う」
「アンリ…!!お前まで…!?」
さらに、新たに現れた細剣使いのアンリまでもが、俺を貶し始めた。
三人に同時に攻撃され、俺はほとんど泣きそうだった。
「アルト…戦いで役に立たない…ちょろちょろと…私たちの周りを…動き回るだけ…目障り…」
「そんな…」
確かに。
俺は戦闘に置いて目立つ活躍をしていないかもしれない。
俺はあくまでこのパーティーにおけるサポート役。
だが、それでも自分ではパーティーに十分貢献しているという自負があった。
日々の弛まぬ努力で支援魔法や回復魔法は極限まで極めたし、探知魔法だって索敵範囲を伸ばそうと日々努力しているし、いざというときのために、肉弾戦の訓練だって怠っていない。
毎日毎日パーティーのために必死に努力して、ここまでやってきた。
そんな俺が…役立たず…?
「なんでだよ…なぁ、嘘だろお前ら。嘘だと言ってくれ…」
「おいおい、お涙頂戴かよ?みっともねーぞ。自分が無能であることを自覚しろよ」
落ち込む俺に、容赦なく追い討ちをかけてくるリーダーのカイル。
いつもの優しさや親しさはどこにもない。
こいつら、心の中ではこんなこと考えていたのか。
「ずっとあんたのこと、うっざいなーって思ってたんだよねー。で、それをカイルとアンリに話したら、二人も同じこと考えててさー。それで追い出そうって話になったのよねぇ」
「うん…アルト…すごく不快…早く出ていってほしい…みんな思ってる…」
「…っ」
ぐっと熱いものが込み上げてくる。
大切に思っていたパーティーメンバーに裏切られ、俺は涙を流しそうだったが、なんとか堪えた。
「わかった…出ていくよ…」
ここまで言われてこのパーティーに残る理由なんてない。
「今まで、世話になったな…」
震える声でそう言った俺は、三人に背を向けて、荷物をまとめるために2階にある自室へと向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます