少年は坂を下る。

でれまち㌘

第1話 少年は坂を下る。 Rainy Moment - さみしい ブログ

音楽活動をして、何年になるだろう?


この芸術、自己表現、存在証明、または変態行為。またの名を趣味。


何と呼べば良いかわからないが、私は確かに音楽について、


ロックミュージックをずっと心に抱き続けて生きて来ている気がする。


ただ別にこの音楽がなくなってしまっても、


生活に影響を及ぼすかと言えばそうではない。


ただなくなれば、大きなアイデンティティーの喪失になり、私は私ではなくなると思う。


しかしこのロックというアイデンティティーは日本社会の生活にはかなり不向きなものだ。


自分の正しいと思うことを信念に掲げて生きると、


それは他者との対立に繋がり、コミュニティーという概念は存在しなくなるのではないか。


では、ロックとは何か?


私の今の答えは、


ロックとは、きっと受け入れること。


その上で、自分の正しいと思うこと、感じていることを


芸術で表現することだと思っている。








子供の頃、多くの人は誰かの役に立てる人間のことを、


大人と思っていた。


だから、


子供はなりたい職ランキングに自分の慣れると思う職業を素直に書く。


現実世界の職業はどんな職種でも、社会の歯車になり、


憧れの職についても、それを実感しながら生きていく。


そして、己の無力さに情けなさを感じながら生きるものだ。


だから大人になりたい職ランキングを聞けば多くの人が、


不労所得者、地主、トレーダー、経営者などの、


サラリーマンではない


一見働いてないように思える地位の人間に憧れるのだろう。


大人には金の話の本がよく売れる。


有名経営者、著名人が株の話をすれば、株の本が売れ、


NISAの話をすれば、市場は資産運用の話、仮想通貨の話でもちきりになる。


でもそんな上の人間が作ったトレンドに乗っかる人たちがいるから


社会が回る。


資本主義経済とはそうだろう?


人間は求められているものになりたいのだと思う。


大人なら、生活するために金が求められる。


子供は、褒めてもらうために何かになろうとする。


子供にとって褒めてもらうためのものとは、社会が作り出したトレンドであり、


メディア露出の高いもの。そして教育の中に組み込まれているもの。


日本社会生活が送ることのできる職業ということになるのだろう。


だから地方公務員やユーチューバーなどが子供のなりたい職業のベストにランクインしても何も驚かないし、


それは世界の今のニュースやメディアのトレンドを子供に映しているにすぎないから、そこに子供の意思は少ないとも思うのだ。


そんなことを考えながら、進路を決める書類を先生に白紙で提出した。



髪の短くて黒い、瞳が少し茶色い君は帰り道に校門の前に立っていた。


学年で一番頭が良い君がなぜ俺に執着しているかわからなかった。


だが、居心地がよく、よく話をしたりしていた。


そんな間柄だ。特別というわけでもない。



君はどういう人生の過程を今、表現するんだい?


最後の時なにを想いたい?


俺に対して二つの質問を投げかけてきた。


その質問に何も答えずに、逆に投げ返した。


沈黙したまま、笑いだけがおきて


一緒に坂道を下った。



天気は今日も晴れず雨だ。


rainy moment - さみしい製作委員会




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少年は坂を下る。 でれまち㌘ @dele_gram_mati

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