投降の勧告と返答 6
逃げる巨鳥を追うグンカ、そして、少女――。
夜空を駆けて飛ぶ勢いのため、
そうこうする
「カ行・
「対象を任意に動かす」カ行魔名術を仕掛けられ、アヤカムは急減速する。その不可思議に戸惑うためか、前方の散雪鳥は、ギャアギャアと騒がしくなった。
飛行速度をさらに上回り、グンと距離を詰めたグンカ大師は、相手の真上に位置取り、両の手をかざし下ろす――。
「
散雪鳥は、絶叫を上げつつ炎の嵐に見舞われる。
火勢はアヤカムの影形さえ燃やし尽くさんほどに猛り、いくらもがこうと決して消えはしない。どころか、瞬く間に炎の
「お嬢様ッ! 仕留めを!」
「はい!
追いついた少女は、駆ける勢いのまま、火球を
ふたつに分けられた火球は、生物としては完全に死に絶えたのだろう、地上へ力無く落ちていく――。
(しまった! あのままだと!)
追っているあいだに、美名たちはヨツホを抜け、
だが、美名の懸念は無用だった。
「
燃え上がる残骸は、ふたつともが空中でぴたりと止まる。
それらに平手をかざした姿のまま、動力の使い手が少女の横に並び浮かんできた。
「これはこのまま、この地に残していきましょう」
言っている間に、また別の魔名術だろう、炎上のアヤカムは白
それらが地上に降り立つまで見送った美名は、グンカに向き直る。
「お見事でした、グンカ様。あんなに強大な散雪鳥を、こんなにあっさりと……」
「いえ」とグンカは首を振る。
「それを言うのなら、タイバ大師が
パチパチと瞬きを繰り返す美名に小さく笑みを返すと、グンカは、今や遠くに離れたヨツホの方角へ顔を向けた。
散雪鳥が見舞った「朱下ろし」は火事に発展したようで、ヨツホの町の空は、赤々と照らし上げられていた。
「戻りましょう。ハマダリン様が避難の陣頭指揮、
「はい」
刀を鞘に納めた美名は、グンカとふたり、来た空を引き返していく。
「仕舞われないほうがよろしいかと」
「え?」
「散雪鳥や他のアヤカムがまだいるやもしれません。それはなくとも、使役者が
言われて、美名はふたたび剣を抜く。
散雪鳥を使役した者、レイドログ。
投降勧告を聞き及んだのか、そうでないのか――いずれにしろ、なんとか穏便な解決策がないものか苦慮した美名たちを
自身の「イヤな予感」とは、これだったのか。
何故、こんなことを繰り返さねばならないのか。
これで終わりか。終わってくれないのか。終わらせるためには――。
目元と鼻元を拭い、飛びゆく美名。
彼女の心中は、騒がしく揺れていた。
*
延焼の危険が少ない開けた場所――近くの広場に続々と避難してくる住人ら。
ニクリは、人々のなかに、ネコの姿や今日知り合ったばかり――他奮大師の弟子の姿を見つけると、少しばかりの安堵を得ていた。
一方の教主フクシロだが、彼女は燃える空を見上げ、立ちすくむ時間が長い。
「ニクリ大師。これが、レイドログ大師の返答ということでしょうか」
消え入るような声音である。
「
振り返るフクシロ。
彼女の表情には思い詰めるような気配が強く、ニクリには何も答えることができなかった。
「『
「シロサマ……」
哀しみと怒り。
ニクリは、親愛の教主の
「レイドログを極刑相当の
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