投降の勧告と返答 5
(やっぱり、
美名は、空を駆け、現場に急ぐ。
目視するなかでは、炎や黒煙を横切って飛ぶ影――巨大な鳥の姿を、すでに
(でも、
聞き及んでいる限り、小豊囲の周辺を囲んだ「ラ行
この短いあいだに陣を抜けられてしまい、ヨツホまで急行してきたのだろうか。ならば、明良たちは無事なのか。自身が感じていた「イヤな予感」とはこれのことだったのか――。
不安はとめどなく溢れるが、今はただ、これ以上の爆撃を起こさせないよう、アヤカムを食い止めねばならない――。
急速で散雪鳥に向かう美名だったが、アヤカムの直下、キラキラと光が散り舞う光景――「光る雪」の幻想的ともいえる現象を捉えた。
(あれは、「
少女は、空を蹴る足にさらに力を込める。
しかし、加速がついても、散雪鳥にはまだ遠い――。
(間に合わない!)
歯噛みする美名だったが、向かう先の「光る雪」の光景に、ふと違和感を覚えた。
「キラキラ」が、空中に溜まっている。
まるで、見えない地面があるかのよう、ヨツホの空のひとところを境にして、それより下に「光る雪」は落ちず、積もりだしているのだ。
その異変に気付いていないのか、散雪鳥はカチリと
ドォン
爆炎が巻き起こった。それも、少女が幾度も目撃し、間近で食らいかけもしたものより、はるかに
だがそれは、非常に限定的だった。見えない地面があった位置から上部のみ、天に向かって噴くように爆発は起きたのだ。
それがゆえ、ヨツホの町に被害はなかった様子。逆に、仕掛けた側の散雪鳥自身が火に巻かれ、奇声の叫びがあたりに響く。
不可思議な事態に思わず制止し、呆気にとられる美名は、爆炎の背景のなか、ポツンと小柄な影が浮遊していたことに気付き、近寄っていった。
「タイバ様!」
「おお、嬢ちゃんか」
横に並んだ少女に、
「今のは、タイバ様が……?」
「うまくやったじゃろ? かの雪……、どうも、
事前に明かされていたとはいえ、それだけの情報で
しかし、一見しても、これだけで散雪鳥の息の根を止めてはいない様子。燃える火の鳥と化したアヤカムは、苦しみ悶えるようにふらつきながら、空域から離れていくようだった。
「タイバ様、逃げてしまいます!」
「あ、これ。嬢ちゃん!」
言うや否や、美名は鼻から血を噴きつつ、散雪鳥を目掛けて飛んでいく。
「やれやれ。血気盛んなのはいいことじゃが、あれではまだ、追いつけんじゃろうて」
タイバ師の予見どおり、美名と散雪鳥との距離は縮まらない。
セレノアスールのときでさえ、相手が向かってくるのを利用し、そこに「重み」を加え、それでやっと「空中での優位」を得ていたのだ。いくらか弱まっているとはいえ、「空を駆けるアヤカムの頂点」、散雪鳥が逃げに徹すれば、生半可に追いつけるものではない――。
「じゃが、『
散雪鳥を追う美名の横を、人影が、
「グンカ様?!」
「タイバ大師と連携とは、不本意極まります」
ひとりごちるようなカ行
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