少年 イリサワ編

よきヒトと手紙 5

明良へ。


 もし、まだ落ち着いてないようだったらあとでゆっくり見てね。それからでいいから、返事とあなたの状況とを教えてもらえたら嬉しいです。


 昨日の夜から、今まであったことを伝えます。


 ハマダリン様の病を治す仕事は、無事、終えることができました。体調が悪いときも大師様はシャンとしてたけど、治ってからはもっとすごくて、セレノアスールの大勢のヒトたちの前で、大きな声で堂々と言葉を伝えてらしたわ。私も、すごくおおげさに紹介されてしまって、それで、みんなに大きな歓声をもらえました。きっと、セレノアスールのヒトたちには、今回のことで、ワ行劫奪にいい印象をもってもらえたと思います。


 でも、ほんとうはすんなり無事だったわけじゃなくて、ちょっと冒険しちゃって、大師様にもクミにもあとですごく怒られちゃったけどね。


 明良に会いに行くのは、たぶん、ハマダリン様もいっしょになると思います。大師様は病をもらった私のことを、あとで体調が悪くなりはしないか、心配してくれています。できるだけそばにいると言ってくれてるのです。

 大師様の手下に動力の王段のヒトがいるらしくて、そのヒトと私とクミと、そして、大師様とで浮揚術を使って向かうことになりそうです。三日ほどで大都に到着できるみたい。その予定でもしも都合が悪いときは連絡をください。


 そのカ行のヒトはヘヨウさんというらしいんだけど、どういう方でいらっしゃるのか、私もこれからお会いするので判りません。でも、ハマダリン様のほうは明良もきっとすぐに打ち解けられると思う。堂々としてて、格好よくて、少し意地張りだけど、輩のことをすごく大事に考えてるヒトだって感じられます。背が高いのもあるせいか、そばに立って話しかけられるとすごく安心するの。ヤ行のヒトだってのもあるかもしれない。私はもう、ハマダリン様のことが大好きになってるから、きっと明良も大師様と話せばそうなってくれるって気がします。


 もしも、失くしちゃったっていう指を見つけられてたら、できるだけ冷やしといてってハマダリン様が言ってます。もしかすると、元のとおりに動かせるようにはならないかもしれないけど、大師様が研究されてる縫合技術と他奮術とを合わせて、くっつけることができるかもしれないって。だから、大事にしていて。

 私も、あなたに言えたものじゃないかもしれないけど、これ以上は無茶しないように。お願いします。


 それじゃ、返事、待ってます。


美名より。

私の心を込めて。


追伸


 これから、セレノアスールの歌劇を観られるかもしれなくて、わくわくしてます。その感想も、できたら伝えるね。

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