少女とネコ セレノアスール編

よきヒトと手紙 2

美名 宛て

戌の月の三週 昇り日の報


 かねてよりの大都の新税制は落ち着きをみせて問題はない。教会統治下においては意図的に重い税を課していたようだ。施政が変わって実質に課税が緩まったのだから住民にはむしろ歓迎されているよう。

 冬に入り公益工事はおおむね停止。ただし、王宮殿補修や新施設などのゼダンが急を要すると判断したものは継続している。

 奴には軍を編成する思惑がくすぶっているようだが、着手の動きは依然として見せていない。相変わらず、第二教区のグンカが領地の境で軍としか呼べない守衛手隊を並べている。動力大師の遺恨を思えば判らなくもないが、それで緊張状態で粘っているものだから大都の軍備の件に関しては教会の立場からは強く言いきれない。いずれにせよ、引き続き警戒すべき事項。なんらかの動きがあれば諫めるつもりだ。グンカの件については撤退あるいは縮小を打診するようにフクシロにはふたたび提案している。

 明日は大都で催事が開かれる。「奴隷品評会」だ。美名は知っているだろうか。俺はその警護に就くことになった。天候以外に特段に気兼ねすべき点はない。



 以上、コ・ゼダンと大都の近況。引き続きの任に努める。






追伸


警護隊の任務に問題はない。


追伸


大師との面会の特命、励んでくれ。


追伸


俺も年始が楽しみになった。


美名は寝相が悪いとクミから聞いた覚えがある。お前こそ体調を崩さないで元気で大都に来てくれ。待っている。

口の軽いクミにもよろしく。



明良

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