品評の場と闖入者 4
「法を破ったな」
静まり返った場内に、ゼダンの
「勝者には
見下ろす披露台、座り込んでいるソ・ブルドは、
「見よ。あの者の奴隷としての評価は武芸に
「ほざくなよ……」
ゼダン王にキツイ一瞥をくれてやってから、明良は高台より跳び降りた。
観衆の注目、バリの
「立て」
男を見下ろして、明良は命じるように言った。
「
「奇計を用いて、それでも負けて……。磨けるわけ、行けるわけが……」
「……死んだほうがよかったとでも言うつもりか?」
明良はブルドの手首をやおらに掴むと、披露台のうえ、男の身体を引き
自らよりもひと回りは大きい男。抵抗する気配もなく、まるで、雪舞うなか、荷車を引いているかのよう。明良はもの哀しく感じながら、ブルドを引っ張っていく。
やがて、
「見ていろ」
見上げてくる奴隷に、明良は告げる。
「今、これから、俺があの
「……」
「貴方にも奥方やよきヒトがいるだろう。どれだけ勝負の法を重んじていようと、そのヒトの心を沈ませることを、俺は許さんぞ」
呆けたようなブルドを振り切るように身を
相手は雪降りに溶けこみつつ、蒸気を
「……僕を倒す、か。ゼダンは、君にとっても敵のはずじゃなかったかい?」
一瞬だけ
「どういう
正対して、あらためて感じる明良。
半年前の対戦にて、明良はバリに、為す術なく追い詰められた。見切るどころか、余韻さえ捉えきれない剣速。抜刀と同時の瞬間、爆発するように襲い来る攻め気。
今、眼前で静かに立つ男は、その記憶よりも遥かに強いであろうことを肌に感じる。いや、むしろこれこそ、
明良は奥歯を強く噛みしめ、
「この『合わせ筒』は僕が使わせてもらうよ」
「……上々だ」
「加速」の性質の遺物の鞘へ、白刃を納めるバリ。
「増幅」の性質の遺物の刀を振り上げ、上段に構える明良。
奴隷品評の場、帝王の提案で突然に様相変わった「勝ち抜き」戦。
少年と附名大師との
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